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中東の実相に迫る

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OPEC、強気戦略の裏に減産のトラウマ

日本エネルギー経済研究所中東研究センター副センター長兼研究主幹 永田 安彦氏

 中東の動揺が収まらない。残虐なテロを繰り返す過激派「イスラーム国」(IS)の勢力は一時より衰えたとはいえ、戦闘はなお続く。イランの核開発問題やイスラエルとパレスチナの争いも出口が見えない。一方、人口が増え、経済成長が期待されるこの地域は日本企業にとって有望な市場でもある。混沌とした中東の現状をどうとらえ、付き合っていけばよいか、連載で考えていく。

世界の石油の約半分が眠る

 なぜ石油輸出国機構(OPEC)、そして中東地域が注目を集めるのだろう。それはOPECが保有する原油埋蔵量のシェアが世界全体の71%に達するうえ、さらに中東地域へ集中しているためである。中東地域の原油埋蔵量は8,107億バレルで、実に世界の約半分を占める。そして、このように原油供給確保の面で重要であるにもかかわらず、地域が政治的に不安定な状況にあり、目が離せないためでもある。

 オーストリアの首都ウィーンに本部を置くOPECは1960年9月、イラクの首都バグダードで発足した。創設メンバーは、イラク、イラン、クウェート、サウジアラビア及びベネズエラの5カ国で、参加国の定期的協議を目的とした恒久的機関として、OPECの設立を決議した。なお、2015年8月現在、加盟国は12カ国に増えている。

 OPECの市場への影響力は様々な変遷を経ているが、過去非常に強い市場支配力をもった時代があった。1950年代以降、産油国の間に資源ナショナリズムが高揚し、資源に対する権利意識が高まって、1960年のOPECの創設につながった。

 1970年代に入ると、反欧米の風潮がいっそう産油国に広まり、メジャー支配からの脱却を狙っていた産油国は、次々と石油開発への経営参加と国有化を推進し、石油資源に対する主権を回復していった。

 こうして石油メジャーによる石油支配は終わりを告げた。OPECは国際石油資本に代わって、完全に原油価格決定の主導権を握った。そして、OPECのなかで主導的役割を果たしたのが世界最大の産油国サウジアラビアであった。

 こうした状況は1980年代に入って一変する。消費国が石油備蓄を増やし、原子力など代替燃料への転換を進めたほか、北海油田やアラスカなどで非OPEC産油国の生産が拡大したのだ。サウジアラビアをはじめOPEC諸国は減産を行い、原油価格を下支えしようとした。

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