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経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

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ケース7:裁判所からみれば、企業間紛争も「犬も食わない、しょうもない夫婦げんか」と同じ?!

弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸(はたなか てつまる) 氏

今回の悩める経営者:(株)雅・コーポレーション 代表取締役社長 富井トミイマサ(55歳)
相談内容

 先生、一つ、ヤキ入れたってもらえませんかね。まぁ、ゆうたら、ひどい話なんですわ。

 最近、インバウンド型の観光業っていうんですか、まぁ、要するに円安で大挙して押し寄せている外国の方々に、日本の商品をどーんと売りつけるってのが流行ってますでしょ?この流れが来ることは私も随分前からわかってましたわ。デフレの脱却を目指して、札を刷りまくって、カネをジャブジャブ街中にあふれさせたら、そら、円安になりますわな。

 先生も知ったはるとおり、我々も、アジアの方の好きそうな、安もんの雑貨扱ってるだけのしょーもない商社です。そやけど、「この流れに乗って、一歩進んで、小売りまでいてもうたろか」思て、業態転換を検討しておったんです。ただ、大量の在庫を抱えて路面に店出して売りつける、ってことになるとイニシャルコストがばかにならんでしょう?というより、うちの規模からするとなかなかしんどいってことがわかったんですわ。

 仕方ないから、ま、ある旅行会社さんと一緒にやっていこうやとなりましてな、旅行会社の方では直接アジアの皆さんをバスで店まで運んでもらう、我々としては、我々の商品を並べた店でどーんと買ってもらう、そういうWin-Winの関係を目指したわけですな。これであれば、売る算段も相当つくので、うちとしても投資に踏み込めたっちゅうわけです。

 まぁね、見込み通り相当売れましたよ。当初はね、というより、正直、いまでも売れてますわ。

 ほんで、こっからが本題なんですけどな、うちは小さいとはいえ商社です。今回組んだ旅行会社に比べたら体力もあります。それで、この商売を始めるときに、「爆買いツアーを新しく作りますんで、その広告費やら先に貸し付けてもらえません?」みたいなことを言われまして、ほとんどの金はうちで工面したったわけです。利益に関してはこっちのリスクも勘案して7対3という合意をしとりました。最初はお互いの雰囲気も良かったんで、この貸し付けも含め書面にはしてなかったんですなぁ。

 で、事業も軌道に乗ったんで、分割でもええから金返してくれんか?って言いましたら、旅行会社の方では、「金?なんのことです?あれは社長が『爆買いツアー』に投資しはったもんでしょ?それで利益も多くもってってるじゃないですか。そんな投資した金を返せ、とか聞いたこともない話ですわ」なんて言いよるんですよ。

 貸したもんは貸したもんですから、返してもらわな、ということで請求を続けておったんですが、旅行会社の方は、「そんなん言うんやったら、これまで少ない利益で我慢しとったけどもう知らん!他に組む相手なんていくらでもおるし、困るのはそっちなんちゃうんか!」なんて言い出して、ツアー客自体もあんまり引っ張ってこんようになったんですわ。

 それどころか、「あそこは外国人観光客をだまして高値で売りつけとる」みたいな風評をいろんなところで触れ回っとるようでしてね、な、先生、これはもう営業妨害とか、名誉毀損とか、刑事の問題ちゃうんですか?

 我々としては、「もうこうなってはこの事業は畳まんとらち明かんな」と思とるんですが、こんなヤカラみたいな相手に対しては、「キチンと筋通さんと。ナメられたままではアカンわ」と思って今日は来たんですわ。先生、一つ、力になってもらえませんか。

 面倒な相手やけど、こっちも腹に据えかねとりますんで、金なら出しますわ。貸した金は返してもらう、うちの名誉を傷つけるようなことに関しては、しっかりと刑事手続きも含めて対処して痛い目を見てもらう、それが他に被害者を出さんために必要やないか。まあ、ゆうたら、ケジメをつけさせるということを、社会正義のためにもやらんとあかんわ、と思とるんです。世のため、正義のための裁判所も、われわれには全面的に味方になってくれるはずですわ。

 こんなもん、チャチャチャー、やって、ギャフンいわして、終わりでしょ。ほな、よろしゅう、頼んますで。

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