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消費者を顧客に、そしてリピーターにするには

理央 周氏

 マーケティングにおいて、すべての出発点になるのは「(1)何を」であることは理解できました。次に大切なのは「(2)誰に」です。今回は、この点について考えていきましょう。

 いい商品を考えること、造り出すことが一番むずかしい。そのハードルをクリアできれば、いつかは顧客に見つけてもらえて、売れるはずだ――。意外なことに、そんな考えを持つ人がけっこういます。

 これは大きな誤解です。というか、間違いです。世の中には、いい商品を生み出しても、売れないケースは山ほどあります。簡単な事例で説明してみましょう。

人間は、売れている商品ほど欲しくなる

 たとえば。書店に足を運べば、たくさんの小説が売られています。その中でも、ベストセラーとされている本はほんの一握りです。では、売れる小説、売れない小説の違いはどこから生まれるのでしょう。どの小説が面白いと思うかは人によって好みによってさまざまですから、絶対的な基準はありません。ただし、せっかくお金を出して買うなら、自分が面白いと感じられる本がいいに決まっています。

 では、どう判断するのか。小説は、読んでみなければわかりません。

 そこで私たちが小説を買う場合、特に初めて読む作家の作品を選ぶ際には、もちろん「直感が頼り」という人もいるでしょうが、ベストセラーになっていてみんなが面白いと言っている、あるいは信頼できる有名人や知り合いが推薦している、などを基準とすることが多くなります。ベストセラーに面白い作品が多いことは、かなりの人が経験的に理解しています。反論のある方もいるでしょうが、売れているということは、それだけ多くの人が好印象を持ったということです。

 人間は初めての商品を買おうと思っても、その商品の価値がどれほどのものなのか、その情報を知りません。つまり、商品を提供する側と買う側とで、持っている情報に差があるということです。これを「情報の非対称」と言います。この情報の非対称がある場合に、価値の判定をしなければならない人、つまり何かを買おうとする人は、何かしらの「手がかり」が欲しくなります。

 そこで、「混んでいるラーメン屋は美味しいのでは」「売れている小説は面白いのでは」「価格の高いマンションは住み心地がいいのでは」など、「混んでいる、売れている、高い」などの手がかりをシグナルとして利用します。これを「シグナリング効果」と言います。

 だから世の中では、売れている商品はさらに売れるようになるのです。

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