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ケース4:名板貸し(ないたがし)リスクにご注意を

弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸(はたなか てつまる) 氏

顧問弁護士 畑中鉄丸の助言

名板貸し(ないたがし)とは

 江戸時代においては「連座制」なんていう、「自分に責任がなくても、近所の他人のケツを拭かされる」恐ろしい制度がありましたが、近代法制においては「人は自らの意思に基づいた約束にのみ拘束される」というのが基本的な考え方であり、「自らが合意したものでない限り、他人が勝手に締結した契約に拘束されることはない」というのが原則です(私的自治の原則)。

 とはいえ、取引社会を円滑にするためには、この原則を貫くと不都合な場合があり、「取引社会において紛らわしい外観が存在し、これを信頼して取引してしまった第三者が損害を被ろうとしている場合、外観作出に責任のある者がケツを拭くべき」とのルール(「外観法理」といいます)が登場しました。

 たとえば、会社法第9条は、「自己の商号を使用して事業又は営業を行うことを他人に許諾した会社は、当該会社と取引しているものと誤信した第三者に対し、商号使用の許諾先である他人とともに連帯して、その取引によって生じた債務を弁済しなければならない」と規定しています。「自社と誤解されるような紛らわしい商号の使用を許したのはテメエなんだから、商号使用者の不始末はテメエがとれよな」というわけです。

 このような、「自己の商号の使用を他人に許諾すること」を「名板貸し(ないたがし)」と言い、商号使用の許諾元を「名板貸人」、許諾先を「名板借人」と呼びます。

 もっとも、本件のように三屋根社長が経営している会社の商号は「株式会社三屋根屋」であり、埼玉の零細工場が付した商号は「三屋根屋東日本合名会社」であり、その商号が全く同じというわけではありません。このように少し名称が異なる以上、「自己の商号」とは言えないようにも思えます。

 しかし、名板貸人の商号に「支店」や「出張所」等のような語が加えられたとしても、同一性を害しない範囲であれば、名板貸しの責任が生じるとされています。

 「金森製材組合」の商号で営業していた金森さんが、他人に「金森木材」の商号で営業することを認めた事案においても、名板貸しにあたると判断されており(最判昭和34.6.11 民集13巻6号692頁)、少しばかり名称を変更したからといって名板貸し責任を逃れられるわけではありません。

 本件は零細工場が「三屋根屋」という商号を使用しており、三屋根社長が経営する「株式会社三屋根屋」とは全く同一の商号ではないとしても、同一性はあると考えられるでしょうから、名板貸し責任が生じる余地は十分にあると言えるでしょう。

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