日本経済新聞 関連サイト

現場スピードを極める情報活用

記事一覧

協力:サイボウズ

下請けの格差拡大、ソフト業界の憂鬱

ITジャーナリスト 田中克己氏

いよいよ業界の多重下請け構造が崩れるか――。企業の情報システムを受託開発するITベンダーは、大きな岐路にさしかかっているという。今は一時的に好況だが、実はその陰で多重下請け構造を底辺から支える中堅・中小のITベンダーが弱体化している。30年以上もIT業界の動向を追い続けてきたITジャーナリストの田中克己氏は、IT業界の健全な発展のために改めて多重下請け構造の問題を指摘するとともに、中堅・中小のITベンダーに警鐘を鳴らす。(日経BizGate)

もう限界? 受託ソフト開発の「多重下請け構造」

――どんな業界にも「下請け」の会社はあるが、受託ソフト開発の業界には、建設業界と同様の「多重下請け構造」がある。田中さんは、これがいよいよ崩れるのではないかと考えているそうだが、どういうことなのか。

<b>「大手9社」と「中堅15社」の売上高の推移</b><br>(売上高のピークだった2007年度を100とした場合) 「大手9社」と「中堅15社」の売上高の推移
(売上高のピークだった2007年度を100とした場合)

 企業のIT投資が低迷する中で、大手のITベンダーだけが業績を伸ばし、中堅以下のベンダーが苦しい状況に陥っている(右のグラフを参照)。リーマンショック前の2007年度と比べると、業績の格差が広がっていることがわかるだろう。

 このままでは、多重下請け構造を底辺から支える中堅・中小のベンダーが立ち行かなくなってしまうのではないか。中堅・中小ベンダーは、もっと危機感を持って自社のビジネスのあり方を問い直す必要がある。

 なぜこのような業績格差が起こるのかというと、多重下請け構造の悪い部分が表面化してきたためだ。

 企業情報システムの開発を請け負う「受託システム開発」の業界では、昔から多重下請けの構造がある。大手の開発ベンダーが顧客企業から開発案件を受注し、その一部または全部を開発単価の安い中堅以下の開発ベンダーへ下請けに出すことが常態化している。下請けの開発ベンダーも、受注した案件の一部または全部を、さらに単価の安い開発ベンダーへ孫請けに出している。開発単価を比べれば、もともと大手と下請け・孫請けの間には格差がある。

 多いときは、この下請け構造が5段階に及ぶこともある。開発するシステムが大きくて複雑なほど人材調達力や財務的な体力(※)が必要になるから、そういう案件では大手ベンダーが元請け業者となる。そして、開発者をたくさん集めようとすると下請けの階層が深くなる。

(※)契約形態にもよるが、成果物(設計書やプログラム)を納品するまで売り上げが立たない契約の場合、投入する技術者の数が多く、開発に必要なサーバーや開発ツール類のコスト負担が大きく、納品までの期間が長いほど、財務的な体力が要求される。また、赤字に陥る案件も結構多く、開発規模が大きくなるほど中小ベンダーでは赤字のリスクを負いきれなくなる。

PICKUP[PR]