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ビジネスリーダーのためのCSV超入門

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「公器の経営2.0」の時代がやってきた(前編)

クレアン サステナビリティ・コンサルティンググループ CSV/シェアード・バリュー コンサルタント 水上武彦氏

 松下幸之助氏は言っています。

 「企業は社会の公器である。したがって、企業は社会とともに発展していくのでなければならない。自分の会社だけが栄えるということは、一時的にはありえても、そういうものは長続きはしない。やはり、ともどもに栄えるというか、いわゆる共存共栄ということでなくては、真の発展、繁栄はありえない」

日本の輝きと発展を支えてきたCSV

 最近、CSV(Creating Shared Value;共有価値の創造)という言葉が広がりつつありますが、この松下幸之助氏の言葉は、CSVの基本思想を見事に表現しています。CSVとは、「企業が事業活動を通じて社会的課題に対応することで、企業と社会の両方に価値を生み出し、双方が持続可能に発展する」ことを基本思想とする経営コンセプトです。

 松下幸之助氏だけでなく、近江商人の「売り手良し、買い手良し、世間良しの三方良し」から始まり、日本の発展を支えてきた企業経営においては、CSVの基本思想が根づいていました。具体的事例としては、ホンダのCVCC(複合渦流調速燃焼方式)エンジン開発が秀逸です。

 ホンダが2輪車から4輪車に参入して間もない1970年代、米国でマスキー法と呼ばれる自動車の排ガス規制を導入しようという動きがあり、米国の自動車メーカーはこの法案に強く反対していました。しかし、常日頃「会社のことより、先に日本のため、人類進化のため」と語っていた本田宗一郎氏は、「マスキー法への対応は、企業本位の問題ではなく、自動車産業の社会的責任上なすべきである」と指摘。同時に「これこそ神が与えてくれたビジネス・チャンス」と考え、ホンダの総力を結集して法案に適合するエンジンの開発を推進し、1973年にマスキー法をクリアする低公害エンジンを実用化しました。

 結果的にマスキー法は廃案となりましたが、燃費の良いCVCCエンジンは高い評価を得て、ホンダは4輪車メーカーとして、確固たる地位を築きました。これは、社会的課題に対応する製品・サービスを通じて自社の成長を実現したCSVの典型です(図表1)。

図表1 ホンダは、社会的課題に対応することにより、自動車メーカーとしての地位を確立

 このように、日本が輝いていた時代には、「CSVは当たり前」でした。いや、CSVを実践していたからこそ、日本と日本企業は輝き、発展したと言えるでしょう。

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