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グローバル競争時代のものづくり ~日本企業復権への10カ条

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日本のものづくり維新~グローバル時代に適応したものづくりと人づくり

東京大学大学院経済学研究科  ものづくり経営研究センター特任研究員 吉川良三 氏

✕ 日本の経営者は「危機感」を抱いている
         
◯ 「危機意識」が企業に変化をもたらす


 最終回となる今回は、これまで述べてきたことを踏まえ、これからの日本のものづくりの方向性について言及したい。

変化をもたらすのは「危機感」ではなく「危機意識」

 初回の「"ゆでガエル"と化した日本企業」で筆者は、日本企業が苦境に陥った根本的な原因は、円高や法人税の高さなどのせいではなく、2000年代からのグローバル化、デジタル化に伴うパラダイムの変化に対応してこなかったことにあると指摘した。一方、サムスン電子が躍進できたのは、李健熙(イ・ゴンヒ)会長がそうした変化を早くから敏感に嗅ぎ取り、従来のやり方を続けていたのでは存続できなくなるという「危機意識」を持って、大胆に方向転換を図ったからだということも述べてきた。

 日本でよく耳にする「危機感」という言葉は、「危機意識」とは大きく異なる。「危機感」というのは、景気悪化などに対して不安を感じ、そのような状況を「いつまで我慢すればいいか」と考えるレベル。「感覚」だから、不安の素が遠ざかれば、自ずと消える。一方、「危機意識」というのは、「自身が生き残れるか」と身の危険を強く自覚し、危険を回避するための対策を必死で考える。問題の本質を把握しているから、目先の情勢が好転しても、最高益であっても、油断するようなことは起こらない。

 円安で足元の業績が改善し、法人税減税なども具体的に検討される中、残念ながら、日本企業の間では、「危機感」さえ薄れてしまっているようだ。日本のものづくりをめぐる根本的、構造的な問題は何ら変わっていないにもかかわらずだ。

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