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泉田良輔の「新・日本産業鳥瞰図」

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本当は残酷なイノベーション、覚悟なき日本は低迷

GFリサーチ 泉田良輔氏

 日本人は「イノベーション」という言葉の良い面しか捉えきれていない。実際のイノベーションは、イノベーションを持ち込まれる側にとっては極めて厄介であり、残酷な結果をもたらすものだ。

 新しい事業モデルや商品のイノベーションが起きると、はじめは既存の企業や商品と共存しつつも、次第に既存のシステムへの脅威へと変わっていく。極端なケースでは、新しいシステムがこれまでのシステムを完全に淘汰してしまう。ここで言う「システム」とは、いわゆるバリューチェーンのことであり、研究開発から資材の調達、マーケティング、アフターメンテナンスといった機能が相互に関係し合うつながりを指している。

 イノベーションとは、多かれ少なかれ既存のシステムを潰しにかかるものである。しかし、日本人はイノベーションが既存の市場をそのまま維持しながら、新しい市場が積み上がるような幻想を持っているのではないか。イノベーションを受け入れるということは、成功者が敗者になる頻度を高めることでもある。日本人は、それを本当に意識し、覚悟しているのかと思う。私には、「その覚悟も土壌もないからイノベーションに踏み込めない。だから日本の産業が低迷している」と思えてならない。

アップルのイノベーションがもたらしたノキアの苦境

 具体的なイメージを持てるように、「第2世代(2G)移動通信システム vs. フィーチャーフォン」の覇者だったフィンランドのノキアと「第3・4世代(3・4G)移動通信システム vs. スマートフォン」のイノベーターである米アップルを比較してみよう。

 次の図はアップルとノキアの2001年以降の業績を表したものである(アップルの決算期は9月、ノキアは12月、アップルの2013年度業績は期中のため図に含めていない)。この図からは、ノキアの税引き前利益が2007年にピークをつけていることが分かる。また、アップルが2008年7月に3G対応iPhoneを発売してからは、ノキアの業績が大きく悪化している。両社のターニングポイントはまさにこの時点(3G対応iPhoneの発売)であった。

<b>アップルとノキアの業績トレンド</b><br>出所:SPEEDAと会社資料をもとにGFリサーチが作成 注:アップルの2013年度決算期は2014年9月のため未掲載 アップルとノキアの業績トレンド
出所:SPEEDAと会社資料をもとにGFリサーチが作成 注:アップルの2013年度決算期は2014年9月のため未掲載

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