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新興国市場コラム

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インドでシェアを獲る(後編) 有益な情報は現場にしかない~先入観を捨て、自ら飛び込む勇気を

シグマクシス プリンシパル 大和 倫之 氏

シグマクシス プリンシパル<br>大和 倫之 氏 シグマクシス プリンシパル
大和 倫之 氏
 前編では、インド進出に際し、まずは「現地起点の経営」に視点を転換することが重要であること、そのためにも、実際に現地の市場を体験してみることが有用であることを指摘した。インドでは「自分の足で歩き、五感を通じて得た情報が何よりも大事」で、それは新興国に関して総じて言えることだ。今回は具体的な事例を交え、インドにおける市場調査や情報収集のあり方について、もう少し掘り下げてみたい。

二次情報は「虹」情報?市場調査では見えない世界

 インド・新興国に関する二次情報は、必ずしも実態を正確に反映しているとは限らない。むしろ二次情報ではなく「虹」情報、つまり幻想に近いものも多く、資料化されている情報が全てではないことを肝に命じた上で読み解くことが大切だ。特に、日本のような市場環境に比べて、既に文書化されている情報の絶対量が限られているだけに、目前の情報を既成概念やこれまでの常識に照らして解釈したり、過度に楽観的(または悲観的)に判断してしまったりすると、意図しない結果に陥ることが多い。

 以前、中国における電子部品業界の事業機会について日本企業を支援したことがある。当時は既に韓国・台湾・中国プレーヤーが台頭しており、その中でも技術のコモディティー化を見据えた投資の巧拙で、勝ち組と負け組に分かれる競争環境にあった。

 支援を始めるにあたって、私たちもまずは基本的な二次情報の収集から始めたわけだが、業界の勢力図を確認しようと調査レポートを購入し、目的のページを開いた瞬間、思わず苦笑いしてしまった。「中国市場における主要プレーヤー」を示した円グラフは、約40%の部分について馴染みの大手企業の名前が数パーセントずつのシェアと記され、残り60%は"その他"とグレーに塗りつぶされていたのだ。確かに市場の実態を反映した一面ではあろうが、期待していたローカルプレーヤーの顔ぶれや活躍ぶりには全く触れられていない。

 結果として私たちは、これまで中国を主戦場としてきた韓国・台湾のプレーヤーが市場をどう捉え、今後どのような戦略を採ろうとしているのか、他方で関連産業が集積する深セン・広州周辺の"新興プレーヤー"が一体誰なのかを現地ネットワークを通じて洗い出し、彼らがどこに機会を見出しているのか、それぞれの経営陣と討議して回る、という活動を行った。歴史の長い市場に関しては、各国・各種機関の統計や調査レポート、各社に関する報道・記事、業界の歴史・変遷を示した書籍等といった二次情報が豊富にあるが、新興国市場に関しては充実した情報は期待できない。また、仮にあったとしても、その時点では既に実態を反映していない"賞味期限切れ"の情報であることも多い。市場のダイナミクス、変化の方向性をつかむには、やはり市場を歩き五感を通じて得た印象をもって、業界の"有識者"と討議して回るのが有効だ。

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