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日本企業の競争力を奪った統治改革の失敗 経営はだれのものか

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内部統制がもたらした五つの深刻な問題

加護野 忠男 氏

 会社統治制度改革のなかでも、その改革の狙いの理解が最も難しいのは、内部統制制度の強制導入である。

 なぜ理解が難しいのか。コストを正当化するだけの効果が期待できないからである。その導入・運営のためのコストが膨大であるが、それに見合った効果が期待できないのである。そればかりか、日本の場合には、もしこの制度が機能してしまうと、深刻な弊害すら起こりかねない。もっと心配なのは、日本企業の強みが壊されてしまう可能性すらあることである。

 財務報告に関する内部統制システムは、2006年に新しく制定された金融商品取引法(旧証券取引法)をきっかけに導入された。この法律では、上場企業は内部統制のシステムをつくり、経営者がまず自己点検を行い、ついで公認会計士が監査することが義務付けられた。内部統制システムの監査に備えて、経営者はお金や財産にかかわる業務の流れや社内手続きを公式化し、文書に記録させる必要がある。

 金融商品取引法で規定されているのは、財務的な統制だけであるが、それと並行して会社法では、コンプライアンスをも含めた業務執行についての内部統制システムの開示が義務付けられた。多くの企業は、予測される大小のリスクをすべて洗い出し、そのリスクを最小化するための仕組みをつくることを義務付けられた。

 新しい金融商品取引法の手本となったのは、米国のサーベンス・オックスリー法(SOX法)である。だから日本の制度も、本家の名前をとって「日本版SOX法、JSOX法」と略称される。米国のSOX法は、エンロンやワールドコムなどで相次いだ粉飾決算を防ぐためにつくられたもので、この法を施行するために、企業が従うべき内部統制の手順が微にいり細にわたり規定された。

 米国では細か過ぎるのではないかという批判が出て、見直しが進められた。このような制度を導入するとよい経営ができないという理由で米国の証券市場を避けてロンドンの証券市場で公開するベンチャーすら出てきたほどである。

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