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「個客は常に循環」、気付かねば顧客流出の恐れ

Nexal 上島千鶴氏

<b>ファネル(漏斗)型の消費行動モデル</b><br>この図ではAIDMAモデルとAISASモデルを例に挙げている。シンプルで分かりやすいモデルだが、一方通行のファネル型で近年の消費行動を表すことが難しくなっている。 ファネル(漏斗)型の消費行動モデル
この図ではAIDMAモデルとAISASモデルを例に挙げている。シンプルで分かりやすいモデルだが、一方通行のファネル型で近年の消費行動を表すことが難しくなっている。

 皆さんは、右のような図を見たことがあるだろうか。マーケティングに携わる方々はもちろんご存知だろうが、顧客の消費行動プロセスをファネル(漏斗)の形でモデル化したものである。自社商品に対する顧客行動が「認知→関心→欲求→記憶→行動」といったプロセスを経る中で、顧客が絞り込まれていく様子をファネルの形で表している。

 マーケティング手法としても、マスメディアを使って自社商品に対する認知を広げ、プロモーションで理解を促進し、キャンペーンで契約や受注につなげる、といった一方向の施策で分かりやすい。

 しかし、いまや「個客は消費行動プロセスの中で常に循環している」と思った方がいい。

<b>循環型の消費行動モデル</b><br>消費行動が循環型となり、個客の体験は消費行動全体に影響を与えるようになった。 循環型の消費行動モデル
消費行動が循環型となり、個客の体験は消費行動全体に影響を与えるようになった。

 スマートフォンやソーシャルメディアが普及し、個人が得られる情報量が増え、結果として個人と企業・ブランドとの接触機会も増えている。それに伴い、消費行動プロセスのスタートとエンドの線引きをすることが難しくなっている。さらに、それぞれのプロセス要素が、他の消費行動に直接・間接的に影響を与えていることから、売る側の企業視点(一方向のファネル型)ではなく、買う側の顧客視点(相互作用のサイクル型)で考える方が実態に近くなっている。

 日本の消費人口が減少し続けている今、爆発的な顧客の増加を期待することはできない。企業からの相談依頼を振り返ると、新規顧客層の開拓と並んで多いのが「既存マーケットの中でいかに売り上げを最大化し、既存顧客を守るか」という課題である。限られたパイの中で、獲得できる最大限の顧客を保持している企業では、「1人の顧客のライフタイムバリュー(LTV)をいかにして高めていくか」に焦点を当てているところが多い。

(※)ライフタイムバリュー(LTV)とは、顧客が生涯にわたってもたらすであろう利益の総和を指す。顧客生涯価値ともいう。

 こうした企業が最優先で取り組んでいるのは既存顧客との関係維持・発展だが、実際のところ、そう簡単な話ではない。「個客は循環している」という前提で、既存顧客を守りライフタイムバリューを高めるために必要なことを、顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)の視点から考えていきたい。

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