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なぜ財布のひもは緩むのか、巧妙な「価格の心理戦」

トライバルメディアハウス 池田紀行氏

価格を10%割り引いたら売上はどのくらい伸びる?

 私たち消費者は、値引きをされると、多くの場合、以前よりもお得感を感じ、購入が促進される。これはもう、消費者の性である。では、仮に同じ値引き率(例:10%)だった場合、すべての商品は同じように売れるのだろうか。

 実は、それがそうではないのだ。例えば、いつも行っているコンビニで、ペットボトルのお茶が10%割引になっていたとしよう。いつもなら147円だが、今日は132円だ。

 一方、狙っていた液晶テレビが10%の値引きをしていたとする。いつもは19万8000円だが、今日だけ特別に17万8200円である。

 この場合、同じ10%の値引き率でも、液晶テレビの方が需要量の変化率は大きくなる傾向があるとされる。これを専門用語で「価格弾力性」という。

 仮に10%の割引をしたとき、需要が5%増加したら、価格弾力性は5%÷10%=0.5となる。この値が1よりも大きいと「価格弾力性が大きい」といい、1よりも小さいと「価格弾力性が小さい」という。つまり、価格の変化率よりも需要が大きく変化すれば、価格の変更(値下げや値上げ)による売り上げへの影響が大きいわけだ。

 ちなみに、同じ10%割引でも、10万円と100円では表記の仕方によって価格弾力性が異なってくる。店頭価格が10万円の場合は、「10%引き」ではなく「1万円引き」と表記した方が売れ、100円の場合は「10円引き」よりも「10%引き」と表記した方が売れ行きは良くなる傾向がある。どちらも私たちが支払う金額は同じなのに、購入する商品の価格帯によって「~%引き」と「~円引き」の効果は異なるのだ。

スーパーがこだわる、98円と100円の違い

 さて、2013年10月から消費税増税を見据えて「税抜きの価格表示」が認められることになった。それまでは商品の本体価格と消費税を合わせた「総額表示」が義務付けられていたが、9年半ぶりに価格表示方法が変わった。これに合わせ、大手スーパーなどが加盟している日本チェーンストア協会は「本体価格表示を基本とすること」、つまり税抜き表示を基本とする方針を打ち出している。というのも、スーパーにとって価格の表示方法は価格戦略と密接な関係にあるからだ。

 価格戦略の中で最もよく知られているのは端数価格戦略だろう。スーパーに行けば、店頭にはところ狭しと98円、198円、498円など、端数価格のPOP(店頭販促)が並んでいる。ご存知の通り、たった2円の違いでも、「100円」などピッタリの価格より「98円」のように大台を割った金額の方が圧倒的に売れるのである。皆さんも直感的に同意できるのではないか。

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