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なぜ財布のひもは緩むのか、巧妙な「価格の心理戦」

トライバルメディアハウス 池田紀行氏

高いから売れる商品、いくらまで上げても売れる?

 多くの人が憧れるロレックスの腕時計。安いものでも30万円、高いものでは100万円を超えるモデルまで存在する。ではこのロレックスが廉価版として1万9800円のモデルを売り出したらどうだろうか。今までロレックスに手が届かなかった人たちはこぞって購入するだろうが、高い品質やステータスの象徴としてロレックスを購入していた層からはソッポを向かれてしまうだろう。

 このように、「高いから売れる」という価格を「威光価格」と呼ぶ。購入頻度が少なく、一般消費者には品質の判断が難しい高級品に多くみられる価格戦略だ。

 しかし、価格が高すぎると、あるところから需要が減少してしまう(高くて買わない人が出てくる)。この「高すぎて買えない」と感じる金額を高くするために有効なのが「ブランド戦略」である。

 威光価格は、別の名を「名声価格」という。「高いものは、品質も良いのだろう」といった心理効果を与えるものだ。米沢牛や関サバなど、ブランド化された商品には名声価格がつくられ、「少し高くてもその分品質が良いのだから」「(お正月やホームパーティーなど)せっかくの機会だから、いつもよりも少し良いものを」という心理が働きやすくなる。目利きの消費者なら肉や魚を目で見て「安くて新鮮で良いもの」を選べるだろうが、一般の消費者はそうはいかない。名声価格は、そういう消費者に大きな影響力を持つ。

 ところで、前例がない新商品を発売する場合、最適な価格をどう決めたらいいだろうか。答えは簡単で、迷ったときは消費者に「この値段は高い?安い?」とアンケート調査をするのだ。少し専門的な話になるが、PSM(Price Sensitivity Measurement)分析という調査・分析方法がある。消費者には、次のような質問に答えてもらう。

  • あなたは、この商品がいくらくらいから「高い」と感じ始めますか
  • あなたは、この商品がいくらくらいから「安い」と感じ始めますか
  • あなたは、この商品がいくらくらいから「高すぎて買えない」と感じ始めますか
  • あなたは、この商品がいくらくらいから「安すぎて品質に問題があるのではないか」と感じ始めますか

 これらの回答を集計して、次の4つの価格を割り出す。理想価格と妥協価格の間が、適正な価格レンジとなる。

<b>PSM(Price Sensitivity Measurement)分析の例</b> PSM(Price Sensitivity Measurement)分析の例

(1)最高価格:上限価格とも言われる。最も利益が出る価格だが、これ以上高くなると誰も買ってくれなくなる価格。プレミアム感を出したり、玄人をターゲットとする場合などに有効
(2)妥協価格:多くの消費者が「この価格なら、まぁ仕方がない」と感じる価格
(3)理想価格:消費者が、高すぎず、安すぎず、抵抗なく買うことのできる価格。理想価格で販売することが市場の浸透を早めると言われている
(4)最低品質保証価格:下限価格とも言われる。これ以上安くなると、消費者が品質に不安を感じ、購入しなくなる価格。セール品の値付けの際などに役立つ

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