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なぜ財布のひもは緩むのか、巧妙な「価格の心理戦」

トライバルメディアハウス 池田紀行氏

 しかし、これに「特上(松):3000円」を加えると、注文の割合が変わる。梅の割合がぐっと減り、「松2、竹5、梅3」ないしは「松3、竹5、梅2」になるという。客単価は、後者の場合で2550円となり、16%もアップする。

<b>「松竹梅」価格戦略の例</b><br>メニューに「竹」と「梅」しかない場合の注文比率が「4:6」であっても、「松」を加えることで「松:竹:梅=2:5:3」などと注文比率が高価格帯に移り、客単価が上がる 「松竹梅」価格戦略の例
メニューに「竹」と「梅」しかない場合の注文比率が「4:6」であっても、「松」を加えることで「松:竹:梅=2:5:3」などと注文比率が高価格帯に移り、客単価が上がる


 松竹梅戦略(と呼ぶかどうかは分からないが)の良さは、価格を上げずに客単価を引き上げられることだ。「梅だとケチくさいけど、松だと贅沢すぎるから竹にしておこう」「せっかくの機会だから、今日は松を頼んじゃおう」という消費者の心理をうまく突いた価格設定といえる。

「レジで50人に1人が無料になります!」はお得なのか

 今でもたまに見かける「50人に1人無料」キャンペーン。以前、家電量販店や大手スーパーマーケットなどで頻繁に実施されていたので、ご存知の方も多いだろう。

 無料にするというのは、究極の価格戦略だ。「50人に1人が無料!」と聞けば「もしかしたら当たるかも!」と心が動く。だから、キャンペーン期間中にいつもよりたくさん買い物をしたり、高額商品を前倒しで購入したりする消費者が出てくる。

 しかし、冷静になって計算してみると、それほどすごいキャンペーンでもないのだ。「1人1回10万円まで」と上限を決めていた家電量販店の例で考えてみよう。

 仮に買い物客50人全員が10万円の買い物をした場合、

  • 10万円×50人=お店の売り上げは500万円
  • そのうち1人が無料なので、割引額は10万円
  • 割引額10万円÷売り上げ500万円=割引率(わずか)2%

 宣伝文句のインパクトは大きいが、実は「2%割引実施中!」と言っているのと同じことになる。しかも、50人に1人の当選者が10万円ではなく1万円の買い物だった場合、さらに実質の値引き率は小さくなる。小さな割り引きで客数や客単価が増加するのだから、まさに「ものは言いよう」、巧妙な心理戦なのである。

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