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なぜ財布のひもは緩むのか、巧妙な「価格の心理戦」

トライバルメディアハウス 池田紀行氏

 皆さんは、「特売で買ったトイレットペーパーは減りが早い」と感じたことはないだろうか。自分で買ったことがない方には分からないだろうが、実際にそうなのである。トイレに行く回数が増えたわけではないのに、すぐに芯が見えてきて、新しいものに替えなければならなくなる。

 それもそのはず。ディスカウントストアなどで特売されるトイレットペーパーは、一般的な1ロールの長さである60mより10mも短い50m以下の商品が多い傾向があるのだ(※)。原価が安い商品を安く仕入れ、慣習価格よりも大幅に安く販売することで、需要を刺激しているのである。先ほど「慣習価格の商品は値下げしてもそれほど売れない」と述べたが、賞味期限がなく、家に在庫として置いておける消耗品などの場合は、買いだめ需要が発生するため、有効に作用するケースもある。

(※)トイレットペーパーの長さはJISで規格されおり、JISで規格されているトイレットペーパーの寸法は、1巻(ロール)の長さを27.5m、32.5m、55m、65m、75m、100mの6種で、許容差+3となっているが、実際の店頭に並ぶ商品は様々な長さがある。

 簡単に計算してみよう。

  • 一般的な長さ60m×12ロール=720m
  • 特売品の長さ50m×12ロール=600mでその差120m
  • 60m÷120m=2ロール

 特売されるトイレットペーパー(12ロール)は、実質的に「60m×10ロール」で販売しているのと同じなのだ。

 ちなみにティッシュペーパーは、以前は200組400枚が5箱で298円だったが、現在は160組320枚が5箱で298円が一般的になっている(180組360枚の5箱パックの場合は348円や398円で販売されているケースが多い)。ガムは値段を変えず個数や枚数で量を調整し、居酒屋の生ビールは値段を変えずにジョッキの大きさでビールの量を調整する。これらはすべて慣習価格を維持しながら実質の値上げをしている例だろう。

古くから伝わるうなぎ屋の巧み「松竹梅の価格戦略」

 価格戦略というと何やら現代のマーケティングの話に聞こえるが、実は昔から、商人は経験則で有効な価格戦略を熟知していた。代表的なものに、うなぎ屋のメニューの「松:3000円」「竹:2500円」「梅:2000円」がある(価格は例)。

 実はこれ、客の心理をうまくとらえた見事な価格戦略なのだ。メニューに「上(竹):2500円」「並(梅):2000円」しかない場合、オーダーは半々(5:5)もしくは「竹4、梅6」になる場合が多い。客単価は、後者の場合で2200円となる。

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