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なぜ財布のひもは緩むのか、巧妙な「価格の心理戦」

トライバルメディアハウス 池田紀行氏

 商品やサービスの価格は、1人の消費者として、私たちが最も日常的に触れる企業のマーケティング戦略の最前線である。お財布を開くたびに「価格(によって受けた心理的影響)」を意識してみると、多くの気づきが得られることうけあいだ。

 メーカーのマーケティング担当者や小売店の売り場担当者が仕掛ける巧妙な心理戦に、皆さんは消費者としてどう感じるか、一緒に考えてみてほしい。

「いつもの値段」という安心感に隙あり

 価格心理について、皆さんに質問を1つ。

120円の缶ジュースが並ぶ自動販売機で、ある缶ジュースだけが110円で売られていたと頭の中でイメージしてみてほしい。さて、あなたは110円の缶ジュースを選ぶだろうか。もちろん、嫌いなジュースではなく、特定のジュースへのこだわりはない、という前提である。

 この質問は「慣習価格」に関するものだ。皆さんがこの価格についてどう感じるのか、胸に手を当てて考えてみてほしい。

 消費者の頭の中には、「ずっと昔からこの値段」「いつもこの値段」というイメージが定着した商品がある。代表例は缶ジュース。350ml缶なら価格はだいたい120円だろう。こういう価格を専門用語で慣習価格という。

 慣習価格は、消費者の心の中に一度設定されると、価格を上げることが非常に難しくなる。ある商品だけ慣習価格より高い値段を付ければ、消費者は別の商品を選んでしまう。

 面白いのは、逆に価格を下げても、それほど売れないことだ。これが慣習価格の興味深い点である。私たち消費者は、長い間マインドセットされている価格が上がると一気に割高感を感じる一方で、缶ジュースを買う場合は120円まで許容する習慣がついているため、110円に割り引いてもさほど購買意欲に変化は見られないとされる。皆さんはどう感じただろうか。

本当は、特売ではなかった?

 値上げが非常に難しい慣習価格の商品は、原材料のコストが高騰しても、その原価上昇分を売価に転嫁しづらい特徴を持つ。では、もし原材料コストが上昇したら、どうするのか。

 そこで行われるのは、商品の「数量・容量の調整」だ。

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