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国別に見る新興国ビジネス最新事情

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新興国市場における「事業部門横断型戦略」成功のポイントは?

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 コンサルティング・国際事業本部 国際本部 グローバルコンサルティング部 プリンシパル 澤村 隆之 氏 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 コンサルティング・国際事業本部 国際本部 グローバルコンサルティング部 プリンシパル 澤村 隆之 氏
 組織内に複数の事業部門を抱える大企業では、グローバル展開においても各事業部門がそれぞれ独自の事業戦略を立案し、それに基づいて国・地域を選んで進出するケースが多い。製品・サービスも、競合する企業も異なるため、各事業部門が独自のスタンスとスタイルで海外市場の開拓を進めることは、当然に思えるかもしれない。しかし新興国市場を視野に入れた場合、各事業部門が相互に連携しながら攻め口を探る方が効率的で、かつ事業面でのリスクを抑えることができる局面もありうる。

 前回(「新興国消費市場に向けた"攻め"の営業体制を構築するには」)はBtoCのビジネスに焦点を当て、新興国市場を本格的に攻めるための営業体制のあり方について述べた。今回は主にBtoBのビジネスを念頭に置き、事業部門横断型のグローバル戦略がどんな場合に効果を発揮するのか、考えてみたい。

「事業部タテ割り」をもたらす組織の原理

 「部門横断型戦略」という「ヨコ軸」の話の前に、「タテ型組織」のそもそもの背景を少し振り返ってみます。大手メーカーや総合商社をはじめ多くの大企業では、社内の事業部として、またはカンパニー制・純粋持ち株会社制度といった枠組みの下で、複数の事業部門を傘下に抱えています。各事業部門の自律性と経営意識を高め、モチベーションを向上させる目的もあったと思いますが、ヨコ同士の事業活動は、原材料調達やバックオフィスといった機能を除けば、必ずしも連動したり、ヒト・モノ・カネが共用されたりすることはなく、それぞれが異なる市場で独自に展開しているケースが多いとみられます。結果として、グローバル中期経営計画を策定するプロセスを見ても、まず各事業部門が自部門にとっての海外市場を分析して、次期戦略を練り上げ、それを本社の企画部門が吸い上げる、といった順序になることが多いのではないでしょうか。

 企業単位で事業ポートフォリオを考えると、このプロセス自体、「選択と集中」がないと突っ込むこともできますが、逆の見方をすればこれは当然のリスク分散とも言えます。一方、これをそれぞれの事業部門の立場で考えてみると、ある部門の製品・サービスは隣の部門の製品・サービスとは「住んでいる世界」が違う、つまり市場の規模や利幅、新規参入企業の数やその増減ペースなどが異なるので、事業部門はまずは独自に生き残り策を考えることになるでしょう。

 国・地域単位で市場をとらえてみると、同じ国や地域であっても、ある事業部門にとってはもはや成熟し切った飽和市場である一方、別の事業部門にとってはこれから成長が見込まれる新興市場である場合が出てきます。古典的な経済発展の段階論のような表現ですが、企業としては「プロダクトライフサイクル」的な流れの中で次々に新しい製品・サービスを提供していくことが求められます。しかしそれぞれの事業部門長の立場としては、自らの部門が「成熟→衰退」の道をたどることを座視するわけにはいきませんから、当然に次のマーケットを独自に探し始める動機があるわけです。

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