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日本企業の興亡をかけた「垂直統合化」の戦い

GFリサーチ 代表 泉田 良輔氏

 これからの競争のキーワードは「垂直統合化」だ。すでにあらゆる産業で進行している――。こう指摘するのは気鋭のアナリスト、泉田良輔氏である。「垂直統合化」は米アップルの成功を支えた重要な戦略であり、IT産業では企業の興亡を左右するほどの影響力がある。その一方で、アップルやサムスンの業績は今がピークと読む。このような新しい競争は、ほかの産業でもすでに始まっているという。

 同氏の著書『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』は、2013年4月の刊行後に起きた動きを本書の中で予測していたことなどから、著者の見立てが優れていると実務者やアカデミズムからの評価が高まっている。その第1章を抜粋した『サムスンも日本企業と同じ道をたどるのか』などの連載記事も大好評を博した。その泉田氏に、2014年と今後20年の競争環境を占ってもらった。



――『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』の刊行後に起きた動きとして、泉田さんの見立て通りになったのは、どのようなことだったのか。

 いくつかあるが、重要なことを1つ挙げるとするなら、2013年9月に米マイクロソフトがノキア(フィンランド)の携帯電話事業を買収したことだ。『日本の電機産業』では、「事業モデルを垂直統合型にシフトできない企業は、IT産業から駆逐される可能性が高くなってきた」と書いたが、マイクロソフトが携帯電話事業を買収したのは、事業モデルの垂直統合を進めるための一手だった。ここではIT産業の例(図表1)を挙げるが、事業モデルの垂直統合化はすでにあらゆる産業で進行している。

<b>図表1 IT産業で垂直統合化が進む事業モデル</b><br> その先頭を疾走する米アップルは各レイヤーの事業を取り込もうとしている。出所:『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』25ページの図表1 図表1 IT産業で垂直統合化が進む事業モデル
 その先頭を疾走する米アップルは各レイヤーの事業を取り込もうとしている。出所:『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』25ページの図表1

 この図が示す多層のレイヤー構造は今でも機能していて、今後20年間も変わらないと思っている。一番上位のレイヤーにクラウド・サービス(データセンターからのサービス)があり、その下位にコンテンツ・プラットフォーム、OS、CPU、ハードウェアのレイヤーが続く。クラウド・サービスのレイヤーは、そのうちAI(人工知能)のように進化していくと思う。このように、データセンターで処理させるという上流のところからハードウェアまで、一気通貫してそろえていないと世界の競争で勝てないというのが、これからの競争の条件であり、環境である。

 この事業モデルを作り、大成功したのが米アップルである。そして、強いライバル企業の動きを見ていると、この図の中で「まだ持っていないパーツ」を埋めるための作業を急ピッチで進めている。例えばマイクロソフトはもともとパソコンからスタートしているので、スマートフォンやタブレットのハードウェアレイヤーがぱっとしない。だから、以前から仲の良かったノキアの携帯電話事業を買収してハードウェアを拡充した。これがこの本を書いた後に起こったことの1つだ。

 この買収について、皆、「うまく行かない」と言っている。しかし、これをやらなければマイクロソフトはもっとうまく行かないはず。やらざるを得なかったというのが実情だろう。

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