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日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか

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サムスンも日本企業と同じ道をたどるのか

泉田良輔 氏

デバイスのコスト優位性を奪う「キャプティブの罠」

 2012年12月、サムスンの業績は過去最高益を更新し、株価は上場来最高値をつけました。スマートフォンを中心とするモバイル端末は好調で、メモリーなどの半導体事業は収益を確保しています。一見するとサムスンではすべてがうまくいっているように見えますが、実際には、スマートフォンに続く次の収益の柱が見えていません。

 サムスンのトップマネジメントは、2年後には、スマートフォン事業がいまのような利益率を確保することが難しくなるだろうと見ているようです。それは、ハードウエアの技術変化が乏しくなることで販売価格が大きく下がり、新興国を中心に販売台数が伸びる余地はあってもコモディティー化が急激に進むと考えているからです。

 また、アップルやグーグルが進める、ハードウエアからネットワークを含んだ垂直統合型アーキテクチャーが完成したとき、サムスンのスマートフォンが現在よりも有利なポジションにあるのは難しいと考えられます。

 さらに、サムスンが抱えている、より大きな問題は、デバイスで競争優位にある状況がゆらいでいることです。その要因は、サムスンが「キャプティブの罠」にはまっていることにあります。これは、日本の電機メーカーが陥った罠です。NECのDRAM、シャープの液晶パネル、ソニーのLSIなど、ほとんどの日本の電機メーカーが体験しています。

 キャプティブの罠とは、社内のデバイス事業が社内の最終製品への依存度が高くなることで、自社のデバイスにコスト優位性がなくなることです。デバイスの売り先において社内比率が高まると、外部にいる顧客の情報や製品、産業のトレンドに鈍感になっていきます。また、デバイス事業部が社内の製品要求を次々に取り込んでいく傾向が強くなり、結果として、デバイスの設計が非効率になるのです。

 設備投資のタイミングやその内容も、デバイス事業単独で見たときの採算が重要視されなくなります。「最終製品で収益をあげていればよい」という甘えが出てくるのです。こうして、デバイスのコスト優位性がなくなり、デバイス事業での収益率が落ちてしまいます。

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