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日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか

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なぜ日本企業の強みが弱みに転じたのか

競争のルールが変わった

泉田良輔 氏

フラットパネルが変えた「テレビのつくり方」

 アップルやグーグルなど、世界のテクノロジー企業が新たに覇権を握ろうと、コアビジネスに関係ないハードウエア事業にまで進出してきています。

 そうした競争の結果、特にソニーやパナソニックなどの日本のAV(音響・映像)メーカーの凋落が著しいように見えます。

 なぜ、こうした状況に陥ってしまったのでしょうか。その理由は、日本企業が得意としてきた「デバイスの品質」と「独自デバイスの量産体制」によって最終製品を差別化できなくなっているからです。また、日本の電機メーカーの経営者が、バリューチェーンにおいて電子機器の受託製造を行うEMSや顧客が設計した回路をもとに半導体製造を行うファウンドリーなどの世界の製造インフラの影響力を読み切れなかったからでもあります。

 では、差別化できていた日本企業の最終製品とは何だったのでしょうか。テレビの歴史をたどりながら、いかに日本企業の競争優位にあったポジションが失われていったのかを見てみます。

 ブラウン管テレビの時代には、日本勢やヨーロッパ勢が上位を占めていました。当時グローバルシェア・ナンバーワンだったソニーでも、市場シェアが10%に届いていませんでした。2位以下のメーカーの市場シェアはひしめき合っている状況で、圧倒的なシェアを持つプレーヤーはいませんでした。

 しかし、いまでは韓国メーカーが液晶テレビ市場の上位を占めています。グローバルシェア・ナンバーワンのサムスンは、液晶テレビで25%以上の市場シェアを持っています。

 ブラウン管テレビの時代は、画質を向上させるために、いかにして偏向ヨークや電子銃を開発し量産するか、また、ガラスバルブをどう調達するかが、鍵を握っていました。ガラスバルブはガラスでできており重量もあったため、輸送コストがかかるからです。ブラウン管テレビは、1カ所で大量に生産して世界中に運ぶということができませんでした。

 こうした点から、ガラス工場とテレビの組み立て工場が隣接するメリットは大きく、実際にそうしたことが多く見られました。ガラス工場と電子デバイスの生産能力が、ブラウン管テレビの市場シェアを決定していたといえます。そのため、グローバルシェア・ナンバーワンだったソニーでも10%程度のシェアしかとることができなかったのです。

 これは、サムスンが液晶テレビで25%以上の市場シェアをとっている状況とはまったく異なります。フラットパネルの登場によって、テレビのつくり方が変わったのです。

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