日本経済新聞 関連サイト

未来社会の課題解決に挑む

記事一覧

協力:NEC

パーソナル情報の安心利用へ、「情報銀行」の可能性

横断的なビッグデータ活用でサービス革新を

 毎日の生活を見回してみると、あなたのパーソナルな情報(※)が様々なインターネットサービスや情報機器などに散在しているはずだ。Webアクセス履歴、購買履歴、位置情報など、その種類も多岐にわたる。これら多様なパーソナル情報を「横断的に活用」できれば、個人に画期的なサービスを提供したり、企業が顧客をより深く理解したりできるようになるだろう。そのポテンシャルは大きい。

 しかし、パーソナル情報の活用は進んでいるものの、現状では「横断的」ではない。パーソナル情報を取得した企業が、その事業の範囲内で利用するにとどまっている。なぜなら、パーソナル情報を取得する際に示した利用目的の範囲を超えて情報を利用することができないからだ。プライバシー保護の観点からは当然だろう。

 このプライバシーの問題は非常にデリケートだ。JR東日本は2013年9月20日、Suicaの乗車履歴データを社外に提供(販売)していたことについて、当面見合わせると発表した。このデータは個人が容易に特定できないように匿名化されてはいたが、それでも多くのSuica利用者が強い反発を示したためである。事の成り行きを注視していた企業の中には、「パーソナル情報をビジネスに使うのは、やはり慎重になるべきか」と感じたところも多かっただろう。

 このような事態は、個人にとっても企業にとっても不幸である。個人にとっては、プライバシーに関わる情報がどこへ流れて、どう使われているのかが分からず不安になる。企業側も、そもそも情報取得時に示した利用範囲の制限があるうえ、個人の感情(パーソナル情報をビジネス利用することへの社会的な受容度)にも十分に配慮する必要がある。「パーソナル情報のビジネス利用とプライバシー保護のバランス」に関して、企業と個人の間に明確なコンセンサスがないからだ。結果として、企業が保持するパーソナル情報の多くが"グレーな状態"にある。

(※)購買履歴、位置情報、健康情報など、個人に関わる情報の全般。個人情報保護法の保護対象となる個人情報はその一部。

個人と企業の双方が安心――そんな仕組みを目指す「情報銀行」

 この問題に対して、本質的な変革をもたらし得るビジネスモデル構想がある。それは「情報銀行」という。一言で説明すると、個人がパーソナル情報を預ける信託銀行のようなもので、個人の許可(パーミッション)に基づき、情報を企業に貸し出す仕組みだ。ここでは、出所の異なるパーソナル情報を統合して扱える。

 情報銀行は、"グレーな状態"にあるパーソナル情報について改めて白黒をはっきりさせ、個人と企業が安心してパーソナル情報を扱える環境を作り出す。加えて、新しい情報の組み合わせにより、個人向けに従来はなかったサービスを開発できるようになる。当然、情報銀行は、普通の銀行が預金の管理や運用に対して持つのと同じような「責任」と「透明性」をパーソナル情報について持つ必要がある。

<b>東京大学 空間情報科学研究センター教授の柴崎亮介氏</b> 東京大学 空間情報科学研究センター教授の柴崎亮介氏

 産学協同で情報銀行の実現を目指す「情報銀行コンソーシアム(仮称)」のシンポジウムが9月末に開催された。情報銀行コンソーシアムの代表である東京大学空間情報科学研究センター教授の柴崎亮介氏は、こう話す。「情報銀行が目指す未来社会の姿は、個人と企業の双方が安心してパーソナル情報を活用でき、双方にメリットがある世界だ。さらに、情報銀行が発展していけばパーソナル情報のエコシステムが創出され、日本の産業振興にも貢献できる」。そのために解決すべき法的・技術的課題や社会・経営的課題をコンソーシアムで検討していくという。

 ここでは、柴崎氏へのインタビューをもとに情報銀行のビジネスモデルとその狙いを紹介していく。まだ構想段階の話ではあるが、このアイデアを企業がビジネスに生かすことは、今すぐにでも可能だろう。

PICKUP[PR]