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リクルート流ビッグデータ活用術の全容

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「個の」マーケティングを可能にした新手法

ベイズ統計学を駆使したビッグデータ分析

リクルートテクノロジーズ 青柳 憲治 氏

 「ビッグデータ」が企業活動のキーワードとして取り上げられるようになって久しく、その"ブーム"は今も続いている。これまでに多くビッグデータ活用例とその成果が語られ、米ガートナーのハイプ・サイクル(参考:http://www.gartner.co.jp/press/html/pr20130903-01.html)によると、ビッグデータに対して、現在、世間の期待が絶頂に達している。

 筆者は、マーケティング分野でデータ分析業務を10年ほど行っており、現在はその傍らマーケティング・サイエンスを専攻として、大学院の博士課程に在籍している。このマーケティング・サイエンスの世界では、かなり前から「個の分析」に注目が集まっていた。

 ここでいう「個の分析」とは、個体ごとに分析・予測を行うこと。個体とは、マーケティングでいうところの顧客ごと、ブランドごと、SKU(Stock Keeping Unit:最小在庫管理単位)ごと、時点ごとなどである。最初の3つは実践している企業も多く、分かりやすいだろう。最後の「時点」は時々刻々と変わるマーケットの状況について、毎時点を「個」と考えて分析するもので、将来を予測するために必要な要素だ。

 個の分析は、現代の統計学の主流になりつつある「ベイズ統計学」と深い関係がある。ベイズ統計学がなければ個の分析は実現できない、といっても過言ではない。そこで、以下ではマーケティングを題材に個の分析とはいかなるものか、ベイズ統計学がどのように関わっているのか、実務で何がうれしいのか、について事例を交えて見ていきたい。

飽和状態の市場でマス・マーケティングに限界

 コンピュータの性能が上がったことで、たくさんのデータを「そのまま」、ビジネス上の「現実的な時間」に則した格好で複雑に処理(集計、統計分析)できるようになってきた。「そのまま」というのは、データベースに格納できる量までデータを減らすために無作為抽出(サンプリング)をする、データベースに格納するデータ項目を絞り込む、あるいは集約(集計)して時系列データに加工するといった作業をせず、できるだけ「ローデータ」に近い状態でデータを保持すること。この意味は決して小さくない。「情報の損失を防ぐことができる」からである。つまり、データの情報量を落とすことなく、「個」の情報をそのまま使って分析できるようになるわけだ。

 現代は「マイクロ・マーケティング」の時代だといわれる。日本のような先進国においては、人口が頭打ちになりつつあるなかで、市場に多くの商品があふれ、多くの市場は飽和状態。結果としていわゆるパイの奪い合いが発生し、各市場では熾烈なシェア争いが繰り広げられている。

 こうしたビジネス環境の中で、「消費者はみな同じ」と仮定し、どの消費者に対しても同一の戦略・施策で臨んでいた従来の「マス・マーケティング」は効果がなくなってきているとみられている。代わりに、顧客一人ひとりの嗜好を知り、それに合わせてカスタマイズしたマーケティング施策を打っていく。そんなマイクロ・マーケティングへの期待が高まっている。

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