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協力:NEC

ビッグデータだから生み出せた次世代の製品・サービス

カギ握るデバイス由来データの活用

 ソーシャルメディア上で利用者が交わす"会話"をマーケティングや販売促進に生かそうとする動きが、企業の間で広がっている。しかし、これはビッグデータ活用における「前座」に過ぎない。社会や企業のビジネスを好転させるうえで、より大きなインパクトを持つ「真打」は別にあるという。野村総合研究所コンサルティング事業本部の鈴木良介氏に話を聞いた。


――防災・減災や社会インフラの高度化において、ビッグデータの効用が徐々に明らかになりつつあります。企業経営へのインパクトについてはどう捉えていますか?

 ビッグデータによってビジネスがどう変わるのかを突き詰めて考えると、大きく3つの高度化に行き着きます。1つは「売り方」です。同じ商品でも、国や地域ごとに異なる生活スタイルに応じて販売メッセージを変える。あるいは、顧客ターゲットに合わせてネット広告を表示したりダイレクトメールを配信したりする。この分野では多くの企業がすでにビッグデータを積極的に活用し始めています。

野村総合研究所 コンサルティング事業本部 ICT・メディア産業コンサルティング部 主任コンサルタント 鈴木良介氏<br />

2004年、慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科修士課程を修了し、同年に野村総合研究所へ入社。以来、一貫して情報・通信を活用した事業の高度化に関する調査・コンサルテーションに従事している。ビッグデータ関連のセミナーで講師を務めるほか、日経文庫「ビッグデータ・ビジネス」(日本経済新聞社発行)などの著書がある。 野村総合研究所 コンサルティング事業本部 ICT・メディア産業コンサルティング部 主任コンサルタント 鈴木良介氏
2004年、慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科修士課程を修了し、同年に野村総合研究所へ入社。以来、一貫して情報・通信を活用した事業の高度化に関する調査・コンサルテーションに従事している。ビッグデータ関連のセミナーで講師を務めるほか、日経文庫「ビッグデータ・ビジネス」(日本経済新聞社発行)などの著書がある。

 2つめは「売り物」。個人の興味に応じてコンテンツを提供するメディアやソーシャルゲームの分野を皮切りに、顧客一人ひとりのニーズに見合った商品を販売する用途でビッグデータへの期待が高まっています。保険業では自動車の運転の仕方によって個別に保険料を設定する「PHYD(Pay How You Drive)」と呼ぶ新手の商品も登場しています。

 3つめが、人事や生産管理を含む広義の「組織」の高度化です。よく知られたところでは、ガス機器のダウンタイムを極小化して顧客満足度の向上につなげた大阪ガスの取り組みがあります。食事の準備はもちろん入浴にもガス機器は欠かせません。しかし、現地で故障部位を確認してから部品を手配するようだと、どうしても復旧に時間を要してしまう。この課題を解決する目的で大阪ガスは、蓄積してきた大量の修理履歴などを活用。ガス機器の型式や症状から不具合の内容を推定し、必要な補修部品を持参して担当者が修理に向かっているという話です。

――ビッグデータを使うことで、従来は見えにくかった細かい点まで見極めながら事業を運営できるようになる。

 商品・サービスの開発や各種意思決定の判断材料がきめ細かくなり、様々なビジネスシーンにおいて、従来に増して緻密な考察や議論が可能になるイメージです。

 先の保険商品の例で言えば、自動車の位置を逐次計測しているGPS(全地球測位システム)データから、保険契約者が運転する時間帯や走行ルートを詳細に把握する。そうすることで初めて、免許証の色や年間走行距離による割引にとどまらない新しい商品の提供が可能になります。米国では、人材の評価にビッグデータを生かす「Big Data for HR(ヒューマンリソース)」と呼ぶ取り組みが注目を集め始めています。例えば、パソコンのキーボードの操作履歴を解析して、どれだけ効率よく業務を遂行できる人材かを判断するというものです。

 このようにビジネスに役立つ知見を引き出せるのは、「高解像」「高頻度生成」「多様・非構造」の大きく3つの特性をビッグデータが備えているからです。ビッグデータというと真っ先にデータの容量に目が向きがちですが、その実体は人であれば個人、商品であれば1個や1台のレベルにフォーカスした際、はっきりと人やモノの状態を表すことができるデータです。一つひとつのデータは小さいかもしれませんが、リアルタイムに近い状況を示す色々なデータが集まることで、結果的に大容量になっています。

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