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「で、それをやったら売れるの?」という愚問

トライバルメディアハウス 池田紀行氏

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 再度言うが、私は「マーケティングの各施策に売り上げ向上の効果を求めるな」と言いたいわけではない。その逆である。

 私も会社の経営者である。期首に立てた売り上げ計画と利益計画を達成するために、各部署、各担当者が様々なマーケティング活動を行い、その最終成果に対し全責任を負っている人間である。きれいごとでは済まされない。言い訳もできない。目の前には、非情なほど冷酷な結果としての数値が示されるのみだ。

 B2B企業の経営者として、私に課せられるKGIは売上高、利益額、利益率の3つである。会社の認知度、サービス理解度、信頼度、契約意向、顧客満足度、再契約意向などは重要な指標だが、いくらそれらの指標が高くても、売り上げや利益が上がらなければ最終的には意味がない。

 だとしても、1つの施策担当者をつかまえて「おい、これやったら売り上げは上がるのか?」と聞くことは絶対にない。それぞれのマーケティング施策(担当者)には、それぞれのゴールが設定されているからである。

 売り上げは、企業経営全体のKGIである。文字通り、その企業の資本力、技術力、商品開発力、マーケティング力、営業力などの総体だ。それを、特定の部署、特定の担当者に課してしまうのはあまりにも酷であろう。

 売り上げは企業経営全体としてのビジネスゴール、またはマーケティングゴールである。広告宣伝や広報など、コミュニケーションをつかさどる部署や担当者には、それとは峻別した「広告宣伝(または広報)担当者の努力によって変え得る、売り上げに最も影響を与えるコミュニケーションゴール」(例:認知度、好意度、購入意向など)が課せられるべきで、商品開発担当者には新商品開発数、購入意向、再購入意向などがKGIとして最適であろう。

 「で、売れるの?」という質問が現場から消えることで、それぞれの場所で毎日歯を食いしばって頑張っている担当者たちが正しく評価され、彼らのやりがいが向上することと同時に、様々なマーケティング施策が正しく評価され、マーケティング全体の最適化が進展することを祈りたい。


池田 紀行 (いけだ のりゆき)

トライバルメディアハウス代表取締役社長。1973年横浜市生まれ。ビジネスコンサルティングファーム、マーケティングコンサルタント、ネットマーケティング会社クチコミマーケティング研究所所長、バイラルマーケティング専業会社代表を経て現職。キリンビール、P&G、トヨタ自動車などのソーシャルメディアマーケティングを支援する。『Facebookマーケティング戦略』『ソーシャルインフルエンス』『キズナのマーケティング』など著書多数。Twitter:@ikedanoriyuki、Facebook:http://www.facebook.com/ikedanoriyuki

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