日本経済新聞 関連サイト

絆づくりのオウンドメディア論

記事一覧

日本企業のブランドが弱体化した理由

トライベック・ストラテジー 後藤洋氏

 失われた20年の間に、飛躍的に成長した企業は「モノづくり」から脱却し、イノベーションを起こし、生活者の価値観や体験価値(エクスペリエンス)を根本的に変える「コトづくり」に成功している(コトづくりについては前回のコラムを参照)。そして、この「コトづくり」に欠かせないものが「ブランド」である。

 日本企業の多くはブランドの大切さを認識しつつも、生活者に訴求するブランドを作り、育てていくことについて、海外の企業ほど熱心ではないのかもしれない。そのせいか、日本企業のブランドはかつてよりも相対的に弱体化している。今回は、ブランドが弱体化した理由を考えていくとともに、ブランド先進企業の取り組みを見ていきたい。

さすがにもう"モノづくり偏重"にさよならを

 そもそも「ブランド」とは何か。読者の皆さんには釈迦に説法かもしれないが、ブランドという言葉自体、かなり広義に使われていることも多く、その解釈もさまざまなので改めて定義しておきたい。一般的なものでは、会社の名前(商標)、ロゴなどが挙げられる。ただし、これらはあくまで識別記号の1つであり、狭義のブランドでしかない。世界的なブランドコンサルティング会社である米インターブランドは、以下のようにブランドを定義している。

"A brand is defined as a living business asset, brought to life across all touchpoints which, if properly managed, creates identification, differentiation and value."

 つまりブランドとは「生きたビジネス資産(living business asset)」であり、あらゆる企業活動を通じて生み出される、識別性、差異化、価値を創出する資産そのものであるということだ。

 ここで理解しておきたいのは、前述した「コトづくり」の視点は、まさに生活者とのコミュニケーションのデザインそのものであるという点である。言い換えれば、「モノ」の品質を高めることができても、「コト」を含めたコミュニケーションをデザインできなければ、その商品は「モノ」としての価値しか持たない。逆に「コト」も含めたコミュニケーションデザインは、「モノ」に関わるすべての「コト」を、生活者起点の一貫した経験価値(エクスペリエンス)として垂直統合することができる(「垂直統合」の意味は後述)。これがブランド形成の第一歩である。

 前回述べたアップルや任天堂Wiiの例については、「モノ」だけでなく「コト」も含めた経験によってブランドを表現してきた事例である。さまざまなパラダイムシフトの波を乗り越えてきたこれらの企業には、ブランドの観点でもそれなりの理由があるのだ。

PICKUP[PR]