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課題解決のカリスマ

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ビッグバンの精神はまだ一部しか達成されていない 新しい時代のトリガーを引く

松井証券 松井道夫社長

 この人ほど「イノベーター(革新者)」という言葉の似合う人物はいないだろう。1990年代、証券界から始まった金融業界の地殻変動を先導するかのように、営業マンと店舗の廃止、画期的な手数料体系の導入、ネット証券ビジネスの旗揚げなど、大胆な改革を矢継ぎ早に断行。証券界に旋風を巻き起こしてきた。最近では「私が創ったビジネス、ぶっ壊す」と宣言、デイトレードや少額投資非課税制度(NISA)で「究極の値下げ」を仕掛け、再び新たなイノベーションを起こそうとしている。何が彼を駆り立て、これから何を成し遂げようとしているのか。

Q:過去、取り組んできたなかで、最も画期的だった改革は?
証券業界では希薄だった「コスト意識」を徹底させ、証券会社の営業の柱と考えられていた「外交セールス(対面営業)」を廃止したこと。

Q:現在の最大の課題は?
自らの手でデイトレーダー争奪戦に終止符を打ち、証券業界の新時代幕開けの引き金となる。

アウトサイダーの視点から始まった革命

 これまで実現してきた数々の改革の中で、最も画期的だったのは「外交セールスをやめたこと」だと松井証券の松井道夫社長は振り返る。世間ではインターネット証券(オンライン証券)の先駆者というイメージが強いが、「そんなのは、ツールをコールセンターの電話からインターネットに置き換えただけ。外交セールスの廃止は、証券会社としては『業をやめる』という決断も同然だった」。

 1976年、一橋大学経済学部を卒業した松井(当時は旧姓の「務台」)は、日本郵船を経て、87年に義理の父親が社長を務めていた老舗中堅証券の松井証券に「何の気負いもなく、成り行きで飛び込んだ」。海運業の激烈な競争の渦中で11年間、「四苦八苦しながら揉まれた」松井にとって、護送船団の「競争とは無縁の世界」をぬくぬくと生きる当時の金融界は、180度違った世界であり、すべてが奇異に映った。

 「価格とコストはコインの裏表の関係であって、『コストはお客様が選ぶもの』ということは、郵船の時代に嫌というほど思い知らされていました。その一番の原則すら無視した商売がまかり通っていた。『こんなものを商売といったら、まともに競争している人たちが怒るよ』と率直に思ったんです」

 ところが、90年代に入ってバブル景気が崩壊、業界全体が不況へと転がり落ちて行く。

 「最初は『ざまあみろ』と思ったんです(笑)。でも、自分の会社がつぶれたらだめでしょ」。業界では「不況の理由はバブルが崩壊したから。しばらく待てば元に戻る」と言われていたが、松井にはもっと根本的な理由があるように思えた。

松井証券の歩み
1992~94年
  • 外交営業廃止と電話通信営業開始:対面営業の否定
1996年
  • 株式保護預かり手数料廃止:業界慣習の否定
1997年
  • 店頭登録株式手数料半額化:自由化後の手数料引き下げ宣言
1998年
  • 日本初の本格的インターネット株取引開始:ネット時代到来を予測
1998~99年
  • 日本版ビッグバン:証券業の免許制から登録制への移行/手数料自由化
1999年
  • 1日定額制手数料体系「ボックスレート」導入:取引ごとの手数料否定
2001年
  • ネット証券初のネットFX開始:個人のFX取引普及を予測
2001年
  • 東証1部直接上場
2003年
  • 無期限信用取引の導入:制度信用取引以外の仕組み導入
2008年
  • ネット証券初のCME上場日経225先物「夜間取引」の取り扱い開始:夜間取引実現の布石
2013年
  • デイトレード限定の信用取引「一日信用取引」開始:ネット証券の競争構造を変え、新たなイノベーションを生むための環境整備

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