日本経済新聞 関連サイト

課題解決のカリスマ

記事一覧

「課題の本質を突き詰める」ことから生まれた 型破りのビジネスモデル

アイリスオーヤマ 大山健太郎社長

 リーダーの真の資質は、目の前の課題をどう解決するかによって試される。乗り越えた課題が困難であればあるほど、ピンチはチャンスに、停滞は発展に転ずる。そのとき最も必要なものは何か。実在のケースをもとに、異次元の発想や行動力で課題に挑み、新境地を切り開いてきた時代のカリスマたちに聞く。第1回は、バブル崩壊以降の「失われた20年」にも次々と新たな需要を創造、この間の売上高を約3倍に伸ばしたアイリスオーヤマの大山健太郎社長。

Q:過去に直面した最大の課題は?
オイルショック後の"需要消滅"に直面し、いかにして世の中の変化に対応できる会社に生まれ変わるかを模索。ユーザーの不便解消という切り口から新たな市場を創造するメーカーベンダー(メーカー兼問屋)へ、大胆な業態転換を図った。

Q:現在の最大の課題は?
原価に直結する激しい為替変動を、値ごろ感を保ちながら店頭価格にどう織り込むか。事業でいえばやはり家電。

家電不況もTPPもチャンス、逆張り経営の快進撃

 アイリスオーヤマ(仙台市)は、ホームセンターを中心とした小売店およそ1万3000店に、約1万5000種類もの商品を販売する生活用品の製造卸だ。中身を探せる「クリア収納ケース」や、ガーデニングやペットブームの火付け役になった「園芸用品」「ペット用品」など、身の回りのありそうでなかったアイデア商品や新機軸のヒット商品を次々と市場に投入。近年のデフレ不況下でも売り上げを伸ばし続け、2012年12月期の売上高は前期比10%増の1100億円、経常利益は同71%増の101億円と、ともに過去最高を更新。2013年12月期の売上高も1350億円と、2割強の大幅な増収を計画中だ。

 業績の悪化から大規模なリストラに踏み切る大手電機メーカーの動きに逆行するように、家電事業の拡大を進める同社は今年5月、JR大阪駅前に家電製品の開発拠点を新設。関西大手電機メーカーの早期退職者のなかから技術者20人程度を採用したことでも話題となった。

 また、環太平洋経済連携協定(TPP)への日本の交渉参加により、海外産の安いコメとの競争激化が懸念される折、東日本大震災で被災した東北の農家を支援するため、将来の輸出も視野に、コメの卸売事業に参入。精米から配送まで低温で管理し、小分けした袋には酸化を防ぐ脱酸素剤を封入するなど鮮度の高さを売りに、ホームセンターなどの販路を活用して15年度100億円の売り上げを見込む。

 「家電不況もTPPもチャンス」と言い切る大山健太郎社長に「経営者人生で最大の課題解決」を尋ねたところ、「30歳の頃、会社が倒産寸前までいったときのことですね」。迷わず答えが返ってきた。

 大山は1945年、大阪府で生まれた。プラスチック成型品の町工場を営む父親のもと、8人兄弟の長男として育ったが、19歳のとき、父親が急逝。家族のために学業の道を断念し、従業員5人の工場を継いだ。

 「下請けで終わりたくない」という思いから22歳のとき大山は、浮きなどの水産資材や育苗箱などの農業資材のプラスチック成型品を自社開発し、主に東北地方で販売し始める。「自己資本で10年間、倍々で大きくした」と回想するように、業績は右肩上がりで伸びていった。

 1973年、オイルショックが日本を襲った。プラスチックの原料が高騰する一方で「値段が上がる前に買わなければ」という「駆け込み需要(仮需)」が発生。プラスチック製品の需要は急増し、売り上げも急伸。大阪だけでは製造が追いつかず、金融機関から資金を借りて宮城県の仙台にも新たな工場を設け、会社の規模を拡大した。19歳で継いだとき年商500万円だった会社は、74年には15億円にまでなっていた。しかし、その直後、事態は急変する。

PICKUP[PR]