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日米株価、急落も基本強気トレンドに変化なし

経済アナリスト 田嶋智太郎氏

 言わば、今回はその反動と修正のタイミングが巡ってきたような格好であり、ある意味で相場はそのきっかけを長らく待っていたようなところもある。そして、前述したとおり米雇用統計における「平均時給」の高い伸びが"そのきっかけ"となった。より正確には、強めの指標結果を受けて米10年債利回りが一時2.85%台まで急騰したことにより、金利上昇の兆候を嫌気して株価は大きく下押したということになる。

 いわゆる「金融相場」がいったん終わりのときを迎え、次に本格的な「業績相場」が盛り上がり始めるまでの一定期間、金利上昇に対する"初期反応"として株価が一時的に調整含みとなるのは致し方ないことと言える。ましてや近年はコンピューターによるプログラム売買においてアルゴリズム取引のウェイトが大きくなっているが故の混乱というのも生じやすい。もちろん、ここ数日は突然の下げによって、損失限定に向けた大量のストップ・ロス・オーダーが巻き込まれたほか、狼狽(ろうばい)した投資家の投げ売りなども一気に膨らんだことであろう。

 とはいえ、金利が本格的に上昇し始める局面というのは、すでに経済がバブル的な様相を呈し始めていることが多いと考えることができ、往々にして調整一巡後の株価が再び大きく上値を伸ばす展開となりやすいことも事実である。そもそも、今回はリーマン・ショックのときのように、巨額の損失を抱えた米投資銀行が破たんしたわけでもなく、むしろ米主要企業の足下の業績は"絶好調"を絵に描いたような状況にあるのだ。

 本連載の2017年7月更新分「米経済はバブルの入り口?欧・米金利の行方を考える」でも述べたが、筆者は米国経済がすでに"バブル期"に突入していると考えている。米国のバブルは遅かれ早かれ世界全体を巻き込むことになると考えられ、その意味ではすでに世界経済バブルの局面がスタートしていると言ってもいい。

 そこで参考にしたいのは、やはり前回のバブル期において米金利と株価はどのように推移したかを示す当時のデータである。既知のとおり、かつて米国経済がドットコム(IT)バブル崩壊の痛手から立ち直り、次の新たな金融バブルが萌芽し始めていた時期、米連邦準備理事会(FRB)が政策金利(FFレート)を1.00%から5.25%まで合計17回も引き上げるという策に打って出たことがあった。

 当時、最初の利上げに着手したのは2004年6月のことであり、それから2年後の2006年6月の利上げを最後に打ち止めとされた。その間、下図に見るとおり、NYダウ平均はおおよそ1万ドル前後から1万1500ドル前後へと押しなべて緩やかな上昇を続けることとなった。さすがに、2004年6月から同年10月下旬あたりまでは利上げの影響を見定めたいというムードもあったのか、やや弱含みでの推移を続けた時期もある。

金融バブル期における米株価の推移と利上げ

 しかし、合計17回でトータル4.25ポイントもの大幅な利上げを行っている最中でも米株価は意外なほど底堅く推移していたのである。つまり「金利上昇イコール株価下落」では必ずしもない。ちなみに、2006年6月に利上げ打ち止めとなった後のNYダウ平均は、そこから一気に上げ余地を拡げ、ある意味で当時の金融バブルがピークに達した2007年10月ごろには一時1万4300ドル近辺まで上値を伸ばす場面もあったのである。

日経平均株価は絶好の押し目を形成

 結局、今回は米国における賃金ならびに金利の上昇の兆候がトリガーとなって米株価が大きく下げ、それにつれて日経平均株価もダダ下がりさせられた。その意味では、とんだトバッチリと言えなくもない。

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