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石澤卓志の「新・都市論」

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不動産のESG投資、企業収益にもプラス

みずほ証券 上級研究員 石澤 卓志氏

 ステークホルダーとは利害関係者の意味だが、「大家さん」の事業についてはテナントや地域社会などとの信頼関係が特に重要と考えられる。パフォーマンス指標には、実績をきちんと評価することのほかに、エネルギーや廃棄物に関するデータ収集なども含まれる。リスクと機会とは、品質管理のISO(国際標準化機構)認証などでも使用されている用語で、不動産事業については、事業リスクを踏まえて、省エネや節水に関するプログラムを策定することなどが含まれる。グリーンビルディング認証については後述する。

 このような動きの中で、ESGを制度に組み入れて、より実践的に活用する検討も始まっている。たとえば、国土交通省が2017年6月に策定した「不動産投資市場の成長にむけたアクションプラン」では、ESG投資の基盤整備として、環境性能などが優れた不動産について新たな認証制度を設け、鑑定評価額に反映させる仕組みを作ることが検討されている。

 投資家の期待も高まりつつある。日本不動産研究所が2017年4月に機関投資家等110社を対象に実施したアンケート調査では、ESG投資に適した不動産の賃料収入は、そうではない不動産に対して、現在においては「違いがない」との認識が83.2%に達したものの、10年後については「1~5%程度高い」との見方が59.0%、「6~10%程度高い」との見方が11.0%を占めた。

環境重視のルールは約20年の歴史

 GRESBは不動産会社等のESGに対する取り組みを評価する指標であるが、建物自体の環境性能を保証するシステム(グリーンビルディング認証)については、各国に様々な制度が存在する。日本では、環境性能の総合評価としてCASBEE(キャスビー、Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency、建築環境総合性能評価システム)が、省エネルギー性能に特化した評価としてBELS(ベルス、Building-Housing Energy-efficiency Labeling System、建築物省エネルギー性能表示制度)が広く利用されている。

 GRESBを大家さんの評判とすれば、CASBEEは建物の居心地、BELSはその建物の光熱費のお得度を示すデータと言える。これは主にテナントの立場から見た比喩であるが、実際の指標では、多面的な視点からグリーンビルディングが評価される(図表3)。

図表3:グリーンビルディングの評価項目 出所:CSRデザイン環境投資顧問(株) 出所:CSRデザイン環境投資顧問(株)

 上記の指標のうちCASBEEは、2001年に国土交通省の主導により、産官学共同プロジェクトとして開発された評価システムで、建物、戸建、不動産、街区の分野について5段階(S、A、B+、B-、C)で格付けを行う。2017年4月時点で、602物件がCASBEEの認証を受けている。

 CASBEEについてもREITが先導的な役割を果たしている。2013年~2017年に「CASBEE不動産認証」を取得した建物131件のうち、REITが保有する建物は73件と過半を占めている(私募REITの運用対象を含む)。

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