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石澤卓志の「新・都市論」

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不動産のESG投資、企業収益にもプラス

みずほ証券 上級研究員 石澤 卓志氏

 GRESBの不動産評価への参加者は、年々増加し、2017年時点では、世界で850社となった(会社以外の組織も含まれるが、本稿では「社」の表記に統一した)。

 この850社のうち日本からの参加者は53社で、その内訳は、上場企業が37社、非上場企業が16社となっている。上場企業37社のうち34社はREIT(不動産投資信託)で、時価評価額ベースでは上場REITの約85%(2017年9月時点)が参加している。また、非上場会社16社の半数近くは、私募REIT(非上場のREIT)の運用会社で占められている(図表1)。

図表1:GRESB不動産評価への参加者の推移 出所:GRESB「2017 GRESB RESULT」 出所:GRESB「2017 GRESB RESULT」

 REITは、情報開示について投信法などに厳しいルールが定められているほか、公募REITの投資主(株主)の26%を外国人が占める(2017年8月末時点、東証調べ)こともあって、グローバルな投資基準に敏感である。REITが主導的な役割を果たす一方で、大手不動産会社の参加が少ないことが課題となっていたが、GRESBの評価対象分野が拡大するとともに、参加者の多様化も進んでいる。

ESG投資を不動産実務に取り込む動きが活発化

 以前は、環境への配慮や社会への貢献は、企業にとって負担との見方が強かった。しかし実際は、収益にプラスとなることが多いようだ。たとえば、ケンブリッジ大学が2011年~2014年に、GRESB調査に参加した延べ442社のデータを分析した結果では、GRESBのスコア(得点)と、REITのROA、ROE、運用利回りなどとの間に、正の相関が認められた。

 REITの制度は世界各国にあり、国によって仕組みが異なる部分もあるが、不動産賃貸事業が主な収益源である。「大家さん」のREITにとっては、優良なテナントに長く入居してもらい、空室の発生を抑えることが、収益の確保に重要と言える。そのためには、テナント企業がストレスなく仕事に打ち込めるように、居心地の良い執務環境を整え、テナントとの信頼関係を良好に保つことが必要になる。

 テナントにとっても、省エネ性能に優れるなど入居コストが適正で、防災面に配慮した建物が、BCP(事業継続計画)の観点からも望ましい。このような居心地や信頼関係は客観的な評価が難しいが、これを「大家さんの評判」のような形で見える化したものがGRESBと言える(あくまでも比喩であって、厳密な定義とは異なる)。

 GRESBの評価項目は「マネジメントと方針」「実行と計測」の2軸で構成され、7分野・50項目が設定されている。スコア配分(重み付け)は前者が30%、後者が70%なので、目標を明確にした有言実行が大切であるが、実績をきちんと評価することが、より重視されていると言える。このうちサステナビリティ分野(持続可能な社会への取り組み)については、ステークホルダーとの関係構築、パフォーマンス指標、リスクと機会、グリーンビルディング認証などの項目が特に重視されている(図表2)。

図表2:GRESBの評価項目 出所:CSRデザイン環境投資顧問(株) 出所:CSRデザイン環境投資顧問(株)

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