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AIリテラシー、マネジメントに求められる力

第5回 産業技術総合研究所 上席イノベーションコーディネーターの杉村領一氏に聞く

――AIが出した結果を適切に判断するための知識も重要という声があります。

 AIを使う利点は、例えば大量のデータから相関関係を見つけられることです。そうした結果をビジネスに活用していくには、相関関係から因果関係を見いだしておくことが重要です。相関関係と因果関係の違いを理解することは欠かせませんが、実世界では相関と因果はあいまいに語られることが多いので注意が必要です。

 例えば、事象Aと事象Bが連動して起こっていることが分かったとします。事象Aと事象Bのつながりが分からない状況では、事象Aと事象Bは相関関係にとどまります。相関関係ではたまたま何らかの関係があるように見えるだけで、実際は両者に何の関係もない場合も含まれます。一方、因果関係を見つけられれば、事象Aならば必ず事象Bが起こることが分かります。因果関係を見いだせれば、データ分析の結果をビジネスに活用しやすいでしょう。

――因果関係を見つけるのはAIですか、それとも人間ですか。

 相関関係の中から因果関係を見つけるのは人間の仕事です。データをAIに入力すれば、すべてうまく行くわけではありません。人間がやらなければならないことがあります。

必要なのは論理的な視点

――因果関係を見つけるために、AI活用を考えるビジネスパーソンには何が必要ですか。

 論理的な視点です。何が事実で、その事実から何が言えるのか、そして何が言えないのか、といった最低限の論理性を持たなければなりません。次の2例を考えてみてください。

 まず、昨年、夏前にアイスクリームのPRを前年の2倍に増やしたところ、売り上げが2倍に増えたという事例を考えます。この結果を受けて、PRの効果は絶大と捉え、来年も同様のPRを盛大にやろうとするとします。この考え方は正しいと言えるでしょうか?

 答えは、「必ずしも正しいとは言えない」です。昨年のアイスクリームの売り上げが増えたのは、単に暑かったからかもしれません。今年冷夏だったら、PRをしても売れない可能性があります。この事例では相関関係はあるものの、因果関係があるとは言い切れません。

 次に、店舗の売り上げ比較を考えます。1年間の売上の伸びを見たところ、A店は特に成績が悪かったのに対し、B店は健闘していたとします。このことから、A店の店長を鍛えなおすべきと考えたとしましょう。果たして、この考え方は正しいのか?

 この例の場合、正しいかどうかを判断するのは難しいですね。A店とB店で集計するデータの期間やサンプル数などの条件が同じでないと、正確な比較はできません。しかし、異なる条件であっても、データ、すなわち数字が独り歩きしてしまいます。その結果、間違った判断につながり、状況がさらに悪化する事態に発展する危険性があります。このような判断の誤りは少なくありません。こうした過ちが起こり得ることは、AIを活用する時代であっても考えておかねばなりません。論理的な視点を持たないと、同じような過ちを犯してしまいます。

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