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「常に勝ち過ぎ」ドイツシステムの欠陥

 「我々はすぐに弱気になるのと同様にすぐに調子に乗ってしまう」――。日本のリーダーの言葉ではない。19世紀にドイツ統一を果たした「鉄血宰相」ビスマルク(1815~98)の自国民に対する批評だ。近代国際関係史研究の飯倉章・城西国際大教授は「いつも勝ち過ぎて、うまく負けることができないのがドイツシステム」と指摘する。2018年は第1次世界大戦の終結からちょうど100年。ドイツ帝国は戦場では常に互角以上に戦いながらも、最終的には敗戦国に甘んじた。飯倉教授の「1918年最強ドイツ軍はなぜ敗れたのか」(文春新書)はドイツシステムの長所と欠陥を探った新刊だ。明治以来、日本はドイツから技術や思想を導入してきた。現代でもドイツと共通点が少なくない日本型組織にも多くのヒントが得られそうだ。

経済もサッカーも勝ち過ぎて容赦なし

飯倉章・城西国際大教授は「勝ちすぎて容赦が無い」と語る 飯倉章・城西国際大教授は「勝ちすぎて容赦が無い」と語る

 ――19世紀後半の普仏戦争などから21世紀の今日まで、ドイツ国民は組織力に優れ戦い上手のイメージがあります。現在の欧州連合(EU)経済もドイツの一人勝ちという声が絶えません。

 「ドイツマルクという独自通貨を苦渋の思いで手放しながらも、ユーロへの通貨統合で最も恩恵を受けたのは、強力な輸出産業を持つドイツでした。一方2010年のギリシャ危機の際は、救済策の条件に厳格な緊縮財政を要求してギリシャ国民の反発を買いました」

 「経済だけではありません。サッカーでも2014年のワールドカップ・ブラジル大会準決勝で、ドイツは自国開催での優勝に燃えるブラジルに7対1と完勝しています。開催スタジアムの通称から、サッカーファンが『ミネイロンの惨劇』と呼ぶ一戦です。ホームの熱狂的なサポーターの声援を向こうに回しながら、常に勝ち過ぎ、しかも容赦がありません」

 ――ドイツの強さはどこから来るのでしょうか。

 「ドイツ民族固有の特徴ではありません。サッカーチームでも個々の選手の出身地は多種多様でした。大量リードでも決して手を抜かず、堅実に決めごとを守り、規律に従いながら攻撃を繰り返す『ドイツ』というシステム自体に強さがあり、エネルギーを生み出すのです」

 ――そうしたドイツシステムの力の源泉はどこにあるのでしょうか。

 「ドイツには長年培ってきた家父長主義・直系家族制度の慣習が心理的に残っていると指摘されています。これは軍隊や企業のように上下関係が厳しい組織には、トップの意志が下部にまで確実に伝わる規律の源泉となり効率的に働きます。仏の歴史人口学者、エマニュエル・トッドはドイツの『権威主義的文化』と呼んでいます」

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