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長島聡の「和ノベーションで行こう!」

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108のアイデアから「唯一のデザイン」を生む

第11回 GK京都の榎本信之社長に聞く

ローランド・ベルガー 日本法人社長 長島 聡氏

左脳型人間に「疑似右脳」は作れるか

長島 私は右脳型になるのは無理なので、左脳で「疑似右脳」を作れないかとずっと考えてきました。左脳でいろんなパターンを出して、右脳っぽく見せられないかなと。あるいは「中間脳」みたいなものが作れないものか...。言ってること、わかりますか?(笑)

榎本 わかりますよ。悩みが私たちとは逆ですが、言ってることは近いですね。私たちはどうロジックを付けるか悩むことが多い半面、ロジックに力を入れすぎると右脳的な感覚が鈍るんじゃないかと心配したりします。だから、無私の境地に至る108つのアイデアみたいなことを思い付くのかもしれません。

長島 私たちの場合、出てきた108つのアイデアにロジックを付けろ、と言われたらできると思います。答えがあって理屈を付けるのは得意なわけです。

榎本 そこは、今回の業務提携で一番期待しているところです。私たちが思い付いたアイデアに、きちんと筋道を付けて説明していただく。まさに補完関係ですね。

長島 疑似右脳というのは、幾何学でいう「フラクタル」の概念と似ていると思っています。これは、全体のある部分と全体が大きさのちがう同じ形(自己相似)になっている状態を指します。リアス式海岸や株価の動向などが例ですね。つまり、世の中の多くのことは、少ない要素の組み合わせで説明できるんじゃないかと。しかし、アートのように全体をバッと見せられても全体のままでは私には理解できない。

榎本 デザインの仕事は登山に近いと思っています。作っていく工程が上り坂で、出来上がったものを理解していただく工程が下り坂。2つがセットでデザインという仕事なのですが、上りと下りでは全く中身が違います。デザイナーはともすると下りを軽視しがちで、だから理解されないことが多い。頂点に立ったら、それまでの工程を忘れないといけません。ちゃんと組み立て直して整理しないと理解されない。これも余談ですが、エベレストの遭難の7割は下りで起きるそうです。

長島 なるほど。

榎本 先ほどのフラクタルで言うと、作っていく工程で必要な要素をリサーチしてプラットフォームを組み立てていくイメージですね。でも、それだけでは完成しない。最後はジャンプしないと頂点には届きません。ここはセンスが必要でしょうね。

長島 私の中ではジャンプのところがまだまだ見えてこないですね。

榎本 でもプラットフォームの高さは私たちの3倍くらいありますから(笑)。

長島 いえいえ。そのジャンプと関係しているかもしれませんが、新しいものを生み出すコツってありますか。あるいはクライアントが喜んでしまうコツというか。

榎本 デザイナーって、何でも好きにしていいよ、と言われると弱いんですね。厳しい制約を課されるほど燃える(笑)。日ごろ感じている社会的な課題があって、脳の中に刷り込まれているものがあります。まずはそこが切り口になるのかなと思います。

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