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長島聡の「和ノベーションで行こう!」

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108のアイデアから「唯一のデザイン」を生む

第11回 GK京都の榎本信之社長に聞く

ローランド・ベルガー 日本法人社長 長島 聡氏

長島 我々は「専門性を忘れろ」と言っています。専門と専門の間をつなぐ、埋める。業際が勝負だと。専門性に頼ってしまうと思考が固まるんですよね。

榎本 よくわかります。私たちは「クリエイティブ・ハブ」というオープンイノベーションのプロジェクトを進めています。外部の様々な分野の人たちと共同で新しいことを生み出す。社員には、デザインという言葉に囚われないで考えよ、と話しています。

長島 私も日本的なイノベーションを「和ノベーション」と呼び、社内外に広げようと思っています。デザイナーの視点から、和ノベーションのコンセプトはどう見えますか。

日本人はラテン民族の一面も

榎本 まさに、長島さんの指摘される通りだなと思っています。和と話と輪。3つの言葉をかけているのも面白いですね。日本的というと、真面目、緻密、正確というイメージを持たれますが、私はもう1つの側面が重要だと思っています。それは「遊びを好む」という、ラテン的な一面。いわば「日本人ラテン民族論」です。

長島 へえー、面白いですね。

榎本 例えば、日本人は昔から桜や紅葉を愛でてきましたが、大の男が公然と「花がきれいだ」という国はあまりないんじゃないでしょうか。和歌をはじめ、古典文学のほとんどは恋愛モノですしね。懐石料理にしても、食べられない葉や花等を使ってでも季節感を作る。遊びそのものです。非生産的なものにも価値を見いだす。真面目とラテン、緊張と弛緩、両方あるのが日本文化の面白さではないでしょうか。

長島 私も生け花にトライしたことがあるんですが、どうも左右対称になってしまうんですね。でも先生は違うんです。どうしてだろうと、論理的に解明しようとする自分がまたイヤになるんですが(笑)。

榎本 どこかに遊びがいりますよね。

長島 最近、面白いことをやっている方々とお付き合いするようになって、ようやく少し感覚がわかりかけてきました。この感覚を共有すると、物事の進み方がすごく速くなると思うんですね。そのためには「話」の部分が大事で、自分はこんなことをやりたいという世界観を持つ必要がある。そして、先ほど指摘された絵を描く能力というのは、対話の中で価値を何倍にもするのではないかと思いました。

榎本 デザイナーは一般的に右脳型が多いと言われ、文章を書いたりロジカルに考えたりするのが苦手というイメージがあります。でも実際には両方が必要なんですよ。ただ、両方持つのは難しい。私は右脳と左脳を行ったり来たりするのが大事かなと思っています。右脳と左脳を結ぶ脳梁(りょう)を太くする。ちなみに、女性の会話があちこち飛びやすいのは、脳梁が太くて情報が行き交うスピードが速いからだという話を聞いたことがあります。

 それはさておき、右脳と左脳の間を行き交う情報を脳梁でインターセプトして瞬時にビジュアル化する。周りの人にわかりやすく伝えることで、アイデアの拡大に火を付ける。そういうファシリテーター的な能力もデザイナーには求められると思います。脳みそを外に出して客観的に見せる感覚ですね。

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