日本経済新聞 関連サイト

経済史から考える

記事一覧

アベノミクス成功か失敗か 戦前と比較

東京大学大学院経済学研究科教授 岡崎 哲二氏

 「アベノミクス」は成功か失敗か――。22日に招集される通常国会では過去最高の歳出額となる2018年度予算案が審議される。借金(国債)頼みに拍車をかけたのは異次元金融緩和による財政規律の緩み。物価2%上昇目標は先送りを重ね、金利は底辺にへばり付く。雪だるま式に膨らむ政府債務。火だるまとなる前に打つ手はあるか。戦前「だるま蔵相」の愛称で知られた高橋是清の不況脱出策と比較する。

1930年代の高橋財政、昭和金融恐慌乗り切る

その風貌から「だるま蔵相」とあだ名された高橋是清の邸宅跡地は記念公園になっている(東京都港区) その風貌から「だるま蔵相」とあだ名された高橋是清の邸宅跡地は記念公園になっている(東京都港区)

 日本銀行が行っている大規模な金融緩和、いわゆる「異次元緩和」の開始から4年以上が経過した。異次元緩和の効果については、2016年9月に日本銀行がいわゆる「総括検証」を行ったほか、金融政策、マクロ経済学の研究者がさまざまな分析を行っている。ここでは、これらの分析を前提に、経済史の視点から新しい論点を提示することを試みたい。具体的には、近年のマクロ経済政策を1930年代の「高橋財政」と比較して、政策実施後のマクロ経済の動きをデータによって比較する。あえて80年以上前の政策との比較を行うのは、第二次安倍内閣発足以降のマクロ経済政策の転換にあたって、転換の必要性を主張する論者が高橋財政の経験を参照し、自らの主張を裏付けたことによる。

 例えば2013年4月に開始された日本銀行の大規模な金融緩和、いわゆる「異次元緩和」の直前に日銀副総裁に就任した岩田規久男氏は、04年に編著『昭和恐慌の研究』(東洋経済新報社)を刊行し、その中で戦前、犬養毅内閣の下で行われた1931年12月の金輸出再禁止、32年11月の国債の日銀引き受け発行を「リフレ・レジーム」への転換であるとした。そして、それによって日本経済は29年以降の「昭和恐慌」から短期間で脱出することができたとし、その現代への含意として「経済政策については、金融政策を明確にリフレ・レジームに転換して、日銀がそれに強くコミットすることが重要であることが改めて示された」(p.x)と述べている。

 岩田氏はまた、2009年3月24日に『日本経済新聞』に寄稿した記事でも、マネーストックの増加を提唱するにあたって、高橋財政の4年間にマネーストックが34%増加したのに対して、1999年2月のゼロ金利開始以降の4年間におけるマネーストックの増加が11%にとどまったことを挙げている。

 高橋財政と第二次安倍内閣の下での異次元緩和がマクロ経済に与えた影響を比較するにあたって、あらかじめ高橋財政と異次元緩和に関する事実経過を簡単に確認しておこう。

PICKUP[PR]