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レグテックで規制コスト削減、市場効率化を追求

レグサム、ピッチ・ラン日経賞の2社CEOに聞く

レグテックで資本市場の効率化を突き詰める

クラウドリアルティ 最高経営責任者(CEO) 鬼頭武嗣氏

日経賞を受賞したクラウドリアルティの鬼頭武嗣CEO 日経賞を受賞したクラウドリアルティの鬼頭武嗣CEO

――あらためて、受賞おめでとうございます。

 我々はグローバルなキャピタルマーケット(資本市場)そのものをつくっていきたいと思っています。レグテックの考え方が日本ではまだあまり根付いていないなか、私が目指す世界のコンセプトやこれまで社内外で行ってきた取り組みを評価していただいたのは非常にうれしいことです。

――コンセプトを簡単に説明してください。

 我々が目指しているのはテクノロジーを駆使した分散型の社会・市場システムです。クラウドリアルティに限らず、特定の企業や組織が既得権益を将来にわたって牛耳るという状態ではなくて、市場での取引執行に貢献した人がその都度、相応の対価をもらえるという世界です。また、市場での合意形成において特定の中央集権機関の価値判断に左右されることも少なくなりますので、多様な価値観を受け入れやすくなります。

――鬼頭さんが考えるレグテックはどういうものでしょうか。

 資本市場という文脈で言うと、「市場の健全性・公正性を保つための機構の効率化を突き詰めていくテクノロジー」ということだと思います。市場の参加者には世界各国の規制当局も含まれます。当局が市場の取引を監視・監督するためにかかるコストを極限まで低下させることによって、結果的に投資家や発行体も安全に低コストで取引を執行できるようになると思います。

 そして、分散型の市場においては監視・監督の対象が中央集権的な金融機関ではなく、1つひとつの取引になりますので、当局も膨大な量のデータを処理する必要が出てきます。そのためレグテックはさらに重要な位置付けになるのではと思います。

――起業のきっかけを教えてください。

 前職はメリルリンチの投資銀行部門でJ-REITの新規株式公開(IPO)や公募増資の引受業務やM&Aアドバイザリー業務、不動産の開発証券化などに携わっていました。既存の資本市場のアナログかつ国ごとに部分最適化されたシステムの中で資金調達を行おうとすると非効率な手続きを踏む必要があります。同時に、この硬直的なシステムではそもそも市場にアクセスできる人自体も限られていたため、新しく柔軟かつ効率的で全体最適化された市場を創りたい、と思ったのです。

――現在は不動産に特化して取り組んでいます。

 今はまだ本格的に分散化を進める手前ですが、クラウドリアルティでは不動産証券化とエクイティ・クラウドファンディングの手法を組み合わせてネットを通じた小口資金調達を実現し、京都の町家再生案件やエストニアのモーゲージの証券化などを手掛けてきました。資本市場の仕組みを新しく創る一方で、資金を必要とするプロジェクトと投資家を結びつけるという実態のあるエコシステム創りにも注力しています。

――海外の当局と、規制について議論しているとうかがいました。

 昨年は、日本のレギュラトリー・サンドボックスの制度設計の議論に関わらせてもらっただけでなく、アブダビ、ドバイ、シンガポール、香港、リトアニアなどの金融当局や中央銀行の責任者とも直接意見交換してきました。

 分散型の資本市場を実現するためには、各国のレギュレーションのあり方も変わってくるべきです。そのための新しい国際法体系を、インターナショナルなサンドボックスを立ち上げながら一緒に実験的に創っていきましょう、といった話を持ち掛けています。

 こういう話をすると、海外当局の関係者も共感してくれます。スタートアップでも本質を突いたビジョンを描けていれば海外の人は興味を持ってくれる。会社の大きさや国籍は関係ない。ビジョンだけで多くの人を巻き込んで世界を変えていける、最近そんな風に感じています。

受賞を喜ぶクラウドリアルティの鬼頭武嗣CEO(右)と、REG/SUM事務局の田所雅之氏(ベーシック CSO)(左)

受賞を喜ぶクラウドリアルティの鬼頭武嗣CEO(右)と、REG/SUM事務局の田所雅之氏(ベーシック CSO)(左)

(木村 貴、上田 敬)

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