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英国海兵隊に学ぶリスクマネジメント

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森友・加計問題...忖度は戦場なら悲劇

マッキニーロジャーズ アジア太平洋代表パートナー 岩本仁氏

20代から「部下の部下を動かす」経験

 ダミアンの部隊のように、隊員たちがミッションを理解し、上官ではなくミッションを忖度して働くのは理想的な姿だ。失敗が死をもたらす極限状態だから実現したという面もある。翻ってビジネスの現場では失敗したからと言って死ぬことはない。どんなにひどくても職を失うか給料が減るくらいだ。戦場に比べれば、甘い認識にとどまりがちだろう。

 企業は危機感と信念を持って意識改革を進めるしかない。部下が本音で話しやすい環境を整備するのはもちろんだが、結果をみて修正することを忘れてはならない。意識改革を始めてしばらくたつと、また意見が出にくい状況に逆戻りする場合がある。そんな時に「なぜ言ってくれないのか」と部下を責めたら逆効果だ。部下の意見をなぜ引き出すことができなかったのか、謙虚に考える人とそうでない人ではリーダーとしての成長に大きな差が出てくる。

商工中金の不正に関する第三者委の報告書は、現場が声を上げられない空気を生んだ企業風土の問題を指摘した 商工中金の不正に関する第三者委の報告書は、現場が声を上げられない空気を生んだ企業風土の問題を指摘した

 こうした姿勢を課長時代に身につけた人は、部長やさらに上位に進んでも同じ努力を続ける。部長以上になれば「部下(課長など)を使って、さらに下の部下を動かす」立場だ。ミッションを正確に伝え、現場の本音を聞き出す。この訓練を始めるのは、早ければ早いほど良い。

 「人を使って人を動かす」経験は、軍隊の将校なら士官学校卒業と同時に始まる。少尉として配属されれば、いきなり配下に下士官(曹長など)が付く。自分より戦場でもまれている下士官のノウハウを生かしつつ新兵を含む部隊を統御する。そんなタフな経験を20代から始めるのだから、リーダーシップが身につくのは当然だろう。

 忖度の弊害は組織の上下関係以外でも起きる。例えば合併や共同出資で誕生した企業の事業再構築では、出身母体によって異なる利害が絡み複雑だ。生き残りのため改革が必要だという認識は一致しているのに、進め方を巡って横の部門同士が忖度し合ってもたつく恐れがある。ミッションを共有しスピーディーな変革を遂げるため、相互理解を深める努力が必要だ。

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