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英国海兵隊に学ぶリスクマネジメント

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森友・加計問題...忖度は戦場なら悲劇

マッキニーロジャーズ アジア太平洋代表パートナー 岩本仁氏

 名門企業の品質不正に揺れた2017年。国会では森友、加計両学園の問題で官僚の過度な忖度(そんたく)があったと野党が追及した。商工組合中央金庫の不正融資では第三者委が「過大なノルマに現場が声をあげることができない」問題を指摘。元官僚トップを推戴する経営陣への忖度がガバナンスを揺るがした。もしこれが戦場なら悲劇を生む。上層部の顔色を伺うことで地位を保った将校により旧日本軍が払った代償は余りにも大きい。

命懸けだからこそ上官に直言

安倍昭恵首相夫人との親密さをアピールしていた森友学園が小学校開設をめざした国有地取得の不透明な経緯を巡り、官僚の忖度が指摘された(大阪府豊中市) 安倍昭恵首相夫人との親密さをアピールしていた森友学園が小学校開設をめざした国有地取得の不透明な経緯を巡り、官僚の忖度が指摘された(大阪府豊中市)

 現場が忖度をして言うべきことを言わなかったり上司の歓心を買うことばかりしたりする。「軍隊こそ上下関係絶対で横行しているのではないか」と誤解する人もいるかもしれないが、実際はその正反対だ。

 ビジネス経験が長い元軍人から、こんな批判を聞いたことがある。「なぜビジネスの世界では会議で意見をはっきり言わない人が多いんだ」。日本企業の話ではない。欧米企業であっても、元軍人の目からみれば奥歯に物が挟まった言い方のビジネスマンが多いのだという。彼は続けてこう言う。「戦場では命がかかっている。言うべきことを言わないなんてあり得ない」。

 最大の理由は、ビジネスマンの多くが上司とソリが合わないと昇進できないと考えがちであること。これは意外と外資系企業でも顕著だ。結果を重視する外資であっても、昇進では直属の上司の意見が影響する傾向にある。仕事を巡る言動で損をしたくないと考えれば、上司に忖度した提案をするようになる。

 一方、軍隊では古くから「具申」の習慣がある。指揮官が1人だけで決められない時などに作戦会議を開く。その場で部下が率直な意見を言うのは使命なのだ。上官に忖度した言動は考えられない。

 部下が独自の提案をしなければ、指揮官は複眼的な判断ができない。1指揮官の考えだけにとらわれてしまい、部隊の柔軟な運用を妨げる。その結果、戦場で危険にさらされるのは当の部下たち。だから、自分への評価を気にして忖度するということはあり得ない。命を失っては昇進どころではないからだ。

 企業でも同じことが言えないだろうか。上層部への過度な忖度が横行すれば、結果的に経営判断を誤って会社存続の危機に陥るリスクが高まる。経営者と社員がそうした認識を共有できれば、組織内の風通しはおのずとよくなるはずだ。経営と現場をつなぐマネジメント層にも、多様な意見に耳を傾ける度量を持つことが求められる。

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