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泉田良輔の「新・日本産業鳥瞰図」

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マイクロソフトが再び輝くための成長のカギとは?

GFリサーチ 泉田良輔氏

 Officeの法人向けクラウドサービス「Office 365 Commercial」の契約数は過去1年の各四半期において対前年同期比で30%以上のペースで成長している。また、Officeの家庭向けクラウドサービス「Office 365 Consumer」の契約者数が2017年9月末時点で2800万人である。同社の顧客に対する接点の多さを考えればOffice関連サービスはまだ拡大余地はありそうである。

Office関連事業が成長のカギだが市場は必ずしも安泰ではない

 こうしてみると株式市場が同社に期待しているのは、Azureの急成長が売上高をけん引するとともに、これまでの収益の柱であり、現在も市場で支配的なOffice関連の製品やサービスが含まれるPBPの事業が今後の収益ドライバーとして復活するというシナリオであるといえるだろう。

 とはいえ、Office関連事業を取り巻く市場環境は安泰かといえばそうではない。WordやExcelといったビジネスソフトウエアの法人需要は引き続き強いだろうが、こうしたソフトウエアのニーズはオフィスにおける働き方の変化で大きく変わっていくものでもある。

 これまでのように朝、出勤し、決まった席で作業をするというオフィスの仕事は今後、一層多様化していくはずだ。最近は、プロジェクト単位で複数の会社や部署のメンバーが離れた場所にいながら共同で仕事を行うケースも珍しくない。その場合、メールのやりとりを通じてWordの文書ファイルを共有するといった方法は煩雑で非効率だ。そのため、米Slack TechnologiesのSlack(スラック)のようなチャットサービスに社内外のメンバーをプロジェクトごとに招待してリアルタイムにコミュニケーションしながら仕事を進めるようになっている。

 マイクロソフトのOffice関連事業が直面する課題は、こうした仕事の変化に対応した新しいソフトウエアやサービスをタイムリーに提供していけるかどうか、そしてそれらがPCにおけるWindowsやOfficeのように、仕事の中心的なツールとして使われるかどうかということである。

 最後になったが、PBPに含まれるリンクトイン事業の成否もマイクロソフトが再び輝けるかどうかに大きく影響するだろう。リンクトインにおける交流は就職や転職の際に参考にされることが多い。その意味でリンクトインはビジネスパーソンにとってプラットホームになりつつあり、マイクロソフトが同社のそうした価値を認めて買収したのは理解できる。しかし、マイクロソフトのこれまでの事業とはかなり異質なビジネスモデルや市場特性を持っているため、リンクトインにどのように関わることができるのかは未知数である。

参考情報)
[1] 『マイクロソフト、ノキアの携帯事業買収 14年初めにも』(日本経済新聞 電子版)

[2] 『鴻海、ノキアの携帯買収 グループ会社通じ380億円』(日本経済新聞 電子版)

[3] 『米マイクロソフト、リンクトイン買収手続き完了』(日本経済新聞 電子版)


泉田良輔 (いずみだ りょうすけ)

 GFリサーチ代表。個人投資家のための金融経済メディアLongine(ロンジン)編集長、および株1(カブワン)投信1(トウシンワン)の監修も務める。それ以前はフィデリティ投信・調査部にて日本のテクノロジーセクターの証券アナリスト、日本生命・国際投資部では外国株式運用のファンドマネージャーとして従事。慶応義塾大学大学院卒。著書に『銀行はこれからどうなるのか』『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』。東京工業大学大学院非常勤講師。

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