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泉田良輔の「新・日本産業鳥瞰図」

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マイクロソフトが再び輝くための成長のカギとは?

GFリサーチ 泉田良輔氏

 業績と歴代3人の経営者の関係は興味深い。

 マイクロソフトにはこれまでCEOが3人しかいない。1人目は共同創業者のビル・ゲイツ氏。2人目はスティーブ・バルマー氏で、2000年1月にCEOをゲイツ氏から継承した。また、現CEOのサティア・ナデラ氏が2014年2月より現職に就いている。

 まず、ゲイツ氏はバルマー氏にCEOを交代するまで、1983年度から1999年度までに売上高と営業利益をそれぞれ235倍、379倍へとそれぞれ大幅に拡大させた。冒頭で述べたように、Windows、Word、Excelといったソフトウエア製品をPCにおける事実上の標準にしたのである。

 2人目のバルマー氏もCEO在任期間中の1999年度から2013年度にかけて売上高と営業利益を3.8倍と2.5倍に拡大をさせている。

 しかしバルマー氏は、業績を拡大させた一方で、携帯電話・スマートフォン市場への取り組みで大きなミスを犯した。

 よく知られているように、スマートフォンのOS(基本ソフトウエア)は現在、グーグルのAndroid(アンドロイド)やアップルのiOS(アイオーエス)に市場を独占され、マイクロソフトのスマートフォンOSは、PCにおけるWindowsのような支配的ポジションを確立することができなかった。

 起死回生に向けマイクロソフトは2013年9月、ノキアの携帯端末事業を買収すると発表[1]。マイクロソフトのスマートフォンOSを搭載するノキアのスマートフォンをてこ入れしてライバルを追撃したものの成果は出せなかった。その後(ナデラ氏がCEOになってからだが)、マイクロソフトは2016年5月に台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業へ関連会社を通じてノキアを売却[2]。マイクロソフトのスマートフォン関連事業は風前のともしびだ。

 バルマー氏の在任中、業績が拡大したのに株価パフォーマンスがひどいものとなったのは、このようなスマートフォン市場における失策が一因だろう。

 3人目のCEOに就任したナデラ氏は、マイクロソフトを立て直しつつあるところである。ナデラ氏がCEOに就任して以降、株価は好調で過去の高値を上回ったが、業績は過去のピークに及ばず、改善途上というのが実際だ。

 株価の上昇がみられるのは、ナデラ氏の同社における変革に期待するところがあるからであろう。では、株式市場はナデラ氏に何を期待しているのか。

 ナデラ氏による印象深いアクションといえば、2016年におけるビジネス向けの大手ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)企業、LinkedIn(リンクトイン)の買収発表ではないだろうか。同社にとって過去最大となる262億ドル(約3兆円)という買収額でも話題になった[3]

 2016年12月に完了したこの買収の評価は尚早だが、これまでソフトウエア製品の販売中心だった同社がリンクトインによってSNSのビジネスモデルを取り込んだことは大きな変化といえる。

 現在のリンクトインは、四半期ごとの売上高を伸ばしつつあり、無形資産償却の影響を除けば、営業利益でも黒字化をしている。今後のマイクロソフトがどのように成長を加速していくのかは、多くの投資家が興味のあるところであろう。

マイクロソフトの今後の成長ドライバーとは何か?

 では、株式市場はCEOがナデラ氏に変わることでマイクロソフトのどういった変化に期待をしているのであろうか。

 リンクトインの買収のような新たなビジネスモデルを取り込む動きを通じてナデラ氏の挑戦的なスタンスや考えを推し量ることはできるが、さらに理解しやすい動きがある。

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