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健康診断という「病」

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残業や休日出勤で過労死しない方法とは?

亀田高志 氏

産業医や保健師を味方にする

 ビジネスの最前線では、刻一刻と状況が変わっていくものでしょう。Gさんのように疲弊しているところに、さらに無理を強いられる状況に直面することもあると思います。

 そうした場合に健康管理の面で活用できるのが、「健康相談」という枠組みです。これは学校の保健室を利用する感覚に似ています。「朝礼で貧血を起こした」「熱が出た」「お腹が痛い」というようなときに保健室の先生のところに行った経験は誰もがあるかと思います。

 医師の面接指導は就業制限に直結するようで敷居が高く感じられるかもしれません。しかしこの健康相談は、もっと優しいイメージのものです。

 過重労働に困ったときの相談の際には、疲労などの症状、体調の面で気を付けるべき点、生活習慣上の工夫など、医学的専門家として、いろいろ尋ねてみるとよいと思います。

 Gさんの場合、先にお酒の問題を指摘されたように、飲み過ぎで睡眠の質を低下させ、気分をうつ的にしている可能性がありますから、節酒かしばらくの禁酒を勧められるかもしれませんね。その他、Gさんには通勤電車で座る工夫、短時間の睡眠を昼休みにとる、残業する際の夕方の間食、あとは日曜日のお昼寝や睡眠のとり方など、細かなアドバイスをもらえる可能性があります。

 本当は職住近接が効果的ですが、特に首都圏で職場の近くに引っ越すのは容易ではありません。ただ、直接的な過労死の危惧される深刻なレベルでなくとも、長期的な過重労働の与える社会的な負の側面、例えば、家族関係にも悪影響を及ぼす可能性があることも知っておいた方がよいと思います。

 産業医の職務として、法律で健康相談を行うことが定められていますから、これを利用しても差し支えありません。産業医には守秘義務があります。疲労の蓄積以外に特に気になる症状があって困っているなら、どこの医療機関や、どのような専門科にかかるとよいかを教えてもらうこともできます。

 それでも産業医の敷居が高いようなら、身近な保健師さんや看護師さんにも相談してみるのも1つの手です。また、産業医でも看護職の人でも、医療業界のインサイダーとしてよいクリニックや病院、信頼できる医師を教えてもらうことができます。その上で、利便性の高い医療機関を選んで、可能なら紹介状も書いてもらうとよいと思います。

 なお、紹介状によって病院にかかったときのお金を安くしてもらう制度がありますが、産業医の書いたものでは安くしてもらえないこともありますから、注意してください。

亀田高志 著 『健康診断という「病」』(日本経済新聞出版社、2017年)「第3章 職場の健康管理は何が問題なのか」から

亀田高志(かめだたかし)

株式会社健康企業代表、医師。1991年産業医科大学卒業。企業立病院での臨床研究を経て、大手日本企業や外資系企業での産業医を11年間勤める。2003年より現職母校の産業医養成機関の講師を経て、2006年に同大学が設立したベンチャー企業の副社長に就任。16年に退任後、現職専従となり、現在は企業や自治体などでのコンサルティングや研修、講演、執筆活動に注力している。

健康診断という「病」

著者:亀田高志
出版:日本経済新聞出版社
価格:918円(税込)

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