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健康診断という「病」

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残業や休日出勤で過労死しない方法とは?

亀田高志 氏

なぜ医師の面接指導が活用されないのか

 面接指導の前には、疲労度をチェックして面接指導を受ける人を絞り込みます。「疲労の蓄積が著しい」と判定された人に、突然の病に倒れる可能性が無いかを確認する面談が、課長さんが話していた医師の面接指導というわけです。健康を害している恐れがあると医師が判定すれば、健康診断の就労区分に基づく対応と同じように、就業制限を求める意見が会社に対して出されることになります。

 しかし、医師の面接指導を申し出ることは、ほとんどの人にとって、人事考課や将来の異動に影響する行動に見えるところがあります。もしも不調を感じているなら、自分で病院に行って相談したり、治療を始める人もいるでしょう。その結果をわざわざ会社に伝えて、業務を制限してもらうかどうかは別問題、という考え方もあると思います。

 この長時間労働者に対する医師の面接指導制度は、平成14年に行政通達として公表されて既に15年以上経過していますが、働く人にはあまり浸透していないようです。

「労働安全衛生調査(実態調査)、平成28年」のデータによれば、月100時間を超えて残業や休日労働をした働く人が0.3%います。該当者のうち4人に1人しか面接指導を申し出ておらず、そのうち医師指導を実施した会社は7割弱で、面接指導を確実に受けたのは該当者のうち18.4%しかいません。

 この調査は調査対象が1万3884事業所、回答したのが9564事業所で有効回答率は7割以下にとどまっています。厚生労働省からの調査に応じない会社はおそらく無関心でしょう。ですから、ここに挙げた数字の3分の2しかないと見た方がよいかもしれません。本当はもっとたくさんいるのかもしれませんが、100時間超えは1000人に3人であることを考慮すると、このうちの18.4%の3分の2、つまり1万人に約4人しか、セーフティネットの役割を果たす医師の面接指導を受けていません。

「過労死ライン」の医学的な根拠

 残業や休日出勤が1カ月で100時間、2カ月から6カ月の平均で80時間を超えた場合を「過労死ライン」と呼ぶようになりました。

 過労死とは、働き過ぎの影響で脳卒中や心臓発作によって突然死することを意味しますが、突然に発病する人がいても、その正確な因果関係は医学的には明らかではありません。例えば長時間の残業を繰り返していた人が脳卒中で倒れて病院に救急搬送され、治療を受けている最中に、採血検査や心電図検査あるいは脳のCTやMRI検査で、これは「働き過ぎによるもの」と診断できるわけではないのです。

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