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REG/SUM キーパーソンに聞く

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リーガルテックで日本に眠るアイデアを掘り起こす

ゴールドアイピー代表取締役社長の白坂一氏に聞く

 日本経済新聞社が12月20~21日に開く「レグテック(規制とテクノロジーの融合)」をテーマにしたグローバルイベント「REG/SUM(レグサム)」(=RegTech Summit)では、IT(情報技術)を利用した法律関連サービス・システムの「リーガルテック」も有力分野の1つ。開催にあたり、参加企業・団体のキーパーソンに注目テーマや最新動向などを聞いた。知的財産関連のITスタートアップであるゴールドアイピー(東京・千代田)社長の白坂一氏は、国内企業、特に中小企業レベルでは特許や知財に関する戦略が海外に比べて貧弱な状態だが、リーガルテックを駆使することで日本経済活性化のチャンスにつなげることができると強調する。

守りと攻めの戦略は知財も軍事も同じ

――ゴールドアイピーは国内で数少ないリーガルとテクノロジーを組み合わせたリーガルテック企業の1つ。この分野を手がけたきっかけは?

白坂一(しらさか・はじめ)氏。1977年大阪府生まれ。高校時代の1995年1月に発生した阪神大震災での自衛隊の救助活動に感動し、97年に防衛大学校入学。防衛大時代に図書館で出会ったヘンリー幸田著「ビジネスモデル特許」に強い関心を抱き、2001年に防衛大卒業後に横浜国立大学大学院でITを使った画像処理研究に取り組む。富士フイルムでの知的財産・特許関連業務を経て、11年に弁理士事務所を設立。15年にリーガルテックIT企業のゴールドアイピーを創業、代表取締役社長に就任。 白坂一(しらさか・はじめ)氏。1977年大阪府生まれ。高校時代の1995年1月に発生した阪神大震災での自衛隊の救助活動に感動し、97年に防衛大学校入学。防衛大時代に図書館で出会ったヘンリー幸田著「ビジネスモデル特許」に強い関心を抱き、2001年に防衛大卒業後に横浜国立大学大学院でITを使った画像処理研究に取り組む。富士フイルムでの知的財産・特許関連業務を経て、11年に弁理士事務所を設立。15年にリーガルテックIT企業のゴールドアイピーを創業、代表取締役社長に就任。

 防衛大学校在学中にビジネスモデル特許に関心を抱き、横浜国立大学大学院のIT系研究室を経て、民間企業の知的財産や特許の関連業務に携わってきた。ちょうどその頃、米国で特許を活用したスタートアップが出始め、日本でもいずれ注目されると予想し、2011年に独立して特許業務法人を設立。その後、ビッグデータ解析の米企業関連会社の社長も兼任する中でAI(人工知能)を使った特許関連ビジネスの可能性を感じて、15年にリーガルテックのIT企業「ゴールドアイピー」を設立した。

――防衛大学校からリーガルテックへのつながりは、異色で面白い巡り合わせです。

 もちろん防衛大から自衛隊に進む道もあったが、特許や知的財産権にもっと着目することも日本の防衛に貢献することになると感じた。知財戦略と軍事戦略はとても良く似ている。知財戦略では特許1つ1つが将棋の駒の役割を果たし、その駒の個々の力や動きが重要な要素を占めるけれども、一方で世界の特許情報全体の流れを的確につかまなければ、他者(社)との係争には勝てない。

 特許に関する係争というと、新技術や商標などを無断で使われたといった防御のイメージが強いかもしれないが、同じようなアイデアで市場参入を図る外部企業の防止や全くのコピー商品を製造する企業を市場から閉め出すといった攻めの要素もある。知財・特許に関する年間訴訟数をみると、米国は6000~7000件、中国はおよそ1万件なのに対し、日本は250件程度に過ぎない。

 ビッグデータ解析企業に関わっていた時の感想は、日本企業は外国企業にやられっぱなしだった。「争いはなるべく避ける」というのが日本の企業風土にあるが、世界のビジネス戦線ではそれは必ずしも賢明なやり方ではないことも知っておくべきだ。

――知財・特許分野でリーガルテックはどのような影響を及ぼすのでしょうか。

 リーガルテック、さらに幅広い意味で言うレグテックの進展により、「新しいことは良いことだ」というマインドチェンジが起こることを期待している。知財・特許分野でITを駆使したテクノロジーが普及するメリットは大きい。特許申請や税金関連などのコスト引き下げにとどまらず、攻めの知財・特許戦略を日本企業はもっと取れるようになる。

 新しいことを考えると産業が発展すると誰もが思ってはいるが、いざ特許を取得しようとすると手続きに手間と費用がかかるほか、特許侵害に対する損害賠償額の小ささも日本で特許訴訟件数が少ない理由になっている。国内企業、とりわけ中小企業にとって、特許戦略はあまり割に合わないというのが一般的な見方になっているかもしれない。

 ざっとした言い方だが、日本全国の企業数(会社プラス個人事業者)約380万社(者)のうち、中小企業は99.7%以上と大半を占めるが、特許出願の割合は大企業が85%で中小企業は15%に過ぎない。海外出願率でみると、大企業でさえ34.2%、中小企業は15.5%と低水準だ。こうした貧弱な日本の知財・特許事情がリーガルテックで変化し、特に個人の発明をもっと社会全体が高く評価する土壌の育成につながってほしい。

 現状では弁理士をはじめとする「士(サムライ)業」の各業界や行政組織などでも、新しいことに変わる恐怖感が根強くあるが、日本が国際的な経済戦争で巻き返す転機にリーガルテックをしていかなければと思っている。

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