日本経済新聞 関連サイト

GRIT!やり抜く変革マネジメント

記事一覧

『もしドラ』を持って、変革の現場に出かけよう!

マネジメントソリューションズ 有馬亮二氏

 この連載では、第1回「社長の『想い』、伝わっていますか?」に始まり、これまで計5回の記事で企業における変革プロジェクトを成功に導くためのポイントをご紹介してきました。これらのポイントを理解できたとしても、実際に変革を推進できなければ意味がありません。また、成功するのも、失敗に終わるのも、まずは取り組んでみないことには、変化もありません。「わかる」と「できる」が違うことは、誰もが知るところですが、最終回(第6回)では、変革が「できる」ようになるための方法を提示したいと思います。

 あなたは、ご自身が所属する組織(企業に限らず、非営利団体や、各種クラブなども含む)を変えたいと考えたとき、あるいは会社で「変革」プロジェクトの担当に任命されたとき、最初に何をしますか?

 信頼できる上司・先輩に、どうしたらよいか相談するでしょうか。インターネットを使ってキーワードを検索する方も多いでしょう。また、著名な経営者・経営学者やコンサルタントの著書を参考に、変革の進め方を勉強してから、やるべきことを整理する方もいるでしょう。変革プロジェクトの計画段階(またはその前)からコンサルタントが支援してくれることもあると思います。

 一方、過去に変革プロジェクトを実行して失敗した経験をお持ちの方の中には、また失敗してしまう結末を薄々感じながら、「やっている感」を渋々出す、という方もいらっしゃるかもしれません。

 ここでは、そうした方々をはじめ、組織の変革なんてやったことないし、どうやっていいのかわからない、という方も成功のイメージを持っていただけるように、そして、小さな変革でもよいのでちょっとやってみようと感じてもらえるように、身近なシーンに置き換えてその手順を提示します。具体的には『もしドラ』を使います。

『もしドラ』が変革の良い手順書になる

 みなさんは『もしドラ』(=『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(岩崎夏海著、ダイヤモンド社、2009年))を読んだことはありますか?仮に、読んだことがなくても、書店のビジネス書コーナーにある、目立つ女子高生のマンガが表紙の書籍に(最近では、同様な雰囲気の本も増えましたが...)目を留めたことはあると思います。

 実は、私自身、この『もしドラ』を読んだのはブームを過ぎてからです。大流行していた当時は、マンガの表紙に抵抗を覚え、手にも取りませんでした。

 しかし数年前、知人から紹介されたことがきっかけで読んだところ、予想をはるかに超えた強い感動を覚えました。それは、物語として感動的な内容であることはもちろんのこと、数々の企業の変革に携わって来た自分に「理想的な変革の姿」を見せてくれたからです。

 大げさに聞こえると思いますが、物語の登場人物に、過去にお世話になったクライアントや上司・先輩・同僚の顔がダブり、涙があふれたことを覚えています。

 ビジネスの現場は、本書の舞台となった野球部のような学校のクラブ活動と大きく状況が異なります。本書にあるようなミラクルも起こらないでしょう。しかし、「組織とは何か?」「組織を円滑に運用するためにはどうすればよいか?」という命題は、舞台がビジネスの現場であろうと学校のクラブであろうと、同じように存在すると言えます。

 「経営学の父」とも呼ばれる著名な経営学者であるピーター・F・ドラッカー氏が1973年に著した『マネジメント』(のエッセンシャル版)を、女子高生の主人公が読み進めながら、野球部という組織を変革して行く物語ですので、ビジネスの現場に重ねることができるのは当然とも言えますが、主人公がたどるプロセス(下記参照)が、真似をするにはとてもわかりやすく、そして本質をついています。

1.「マネジメント」と出会う
2.野球部のマネジメントに取り組む
3.マーケティングに取り組む
4.専門家の通訳になる(→マネジメントの組織化を行う)
5.人の強みを生かす
6.イノベーションに取り組む
7.人事の問題に取り組む


 実際の仕事でもよく感じます。私はコンサルタントとして、いろいろな企業を訪問させていただくのですが、本書の主人公が変革を遂行する前の野球部のような状況に陥っている組織が、あまりに多いのです。そして、「どうせ変わらない」と半ばあきらめムードに支配されている組織に、何もせず所属し続けている社員が多いことに驚かされます。

 しかし、本書の野球部のように、自分が所属する組織が変わっていったらすばらしいと思いませんか?

 以下、『もしドラ』の本文を引用(―――引用文―――)し、ビジネスの現場と対比させながら変革を進めてみますので、主人公になったつもりで、野球部をご自身の所属する組織に見立ててください。そして「甲子園に連れて行く」という目標を、ご自身の組織の目標と重ねて、ぜひ読んでみてください。

PICKUP[PR]