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英国海兵隊に学ぶリスクマネジメント

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神鋼・日産...現場の不正、軍なら壊滅

マッキニーロジャーズ アジア太平洋代表パートナー 岩本仁氏

 神戸製鋼所のデータ改ざん、日産自動車の無資格検査...。日本を代表する名門企業で、現場の不正を見抜けない経営の欠陥があらわになった。日本の製造業の強みは現場への権限委譲の巧みさにあったはずだ。それが逆回転を始めたら何が起こるか。もし戦場で前線と軍上層部の間に同じような組織の分断が起きていれば、部隊は壊滅の危機に陥る。

「丸投げ型」権限委譲、会社を分断

神鋼、東レ、三菱マテリアルなど名門のグループ内で品質管理に絡む不正が相次いだ(11月、記者会見で謝罪する神鋼の川崎博也会長兼社長) 神鋼、東レ、三菱マテリアルなど名門のグループ内で品質管理に絡む不正が相次いだ(11月、記者会見で謝罪する神鋼の川崎博也会長兼社長)

 前回、現場への権限委譲を柱とする軍隊生まれの改革の仕組みを紹介した。それを企業向けにアレンジした「ミッションリーダーシップ」は、海外小売チェーンの機動的な売り場づくりなどに生かされている。

 一方、トヨタ生産方式の管理手法などにみられる権限委譲は、日本の製造業の競争力の源だった。現場に創意工夫を促す仕組みが製造技術や品質を向上させた。現場の士気を高める効果にもつながった。このような本来なら役立つ仕組みが、残念なことに一部で機能しなくなってきている。

 問題が起きた企業に顕著であるのは、経営陣と現場が分断されてしまっている点だ。分断により情報の共有が不十分となり、相互の信頼関係も崩れてしまっている。

 現場が不正を正当化して手を染めてしまう論理として、以下のいずれかがみられる。

日産は無資格検査を見抜くことが出来なかった管理体制が問題視された(神奈川県の追浜工場) 日産は無資格検査を見抜くことが出来なかった管理体制が問題視された(神奈川県の追浜工場)

 ・他社や他の部署でもやっている
 ・指示通りにやらないと罰せられる
 ・やった方が得をする

 現場にこのような間違った考えの暴走を許してしまった背景には何があるのか。経営上層部が権限委譲をしたと思い込んでいたことが単なる丸投げであったということに尽きる。

 東芝の会計不祥事では経営上層部が課す業績目標への「チャレンジ」が問題視された。明確な制約は示さず、要するに「現場でどうにかしろ」ということだ。現場を信頼して判断を任せることは悪いことではない。だが、現場がどのように「チャレンジ」したのか、経営陣はしっかりモニターすることが必要だったはずだ。

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