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REG/SUM キーパーソンに聞く

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レグテック、国家戦略含めたビジネス拡大の礎に

新日本有限責任監査法人 金融事業部パートナー 小川恵子氏に聞く

 日本経済新聞社は12月20~21日、「レグテック(規制とテクノロジーの融合)」をテーマにしたグローバルイベント「REG/SUM(レグサム)」(=RegTech Summit)を開催する。本連載ではレグサムに参加する各団体のキーパーソンにその狙いや意気込みについて聞いていく。第1回はEY(アーンスト・アンド・ヤング)の日本におけるメンバーファームであるEY Japanでレグテックチームを率いる、新日本有限責任監査法人の小川恵子公認会計士。EY Japanは今年6月、レグテックの最新動向や分析結果についてEYがまとめたリポートの日本語版『RegTech革命』を発信するなど、日本で最も積極的にレグテックへ取り組んでいる法人だろう。テクノロジーは、規制対応に伴う莫大なコストを削減するだけではなく、生産性の向上や企業統治(ガバナンス)の強化を通じて企業や産業全体を伸ばす礎(いしずえ)の役割を果たすと小川氏は指摘する。

規制に対応した単なるコスト削減ではない

――レグテックは行政や企業にどのような恩恵をもたらしますか?

「レグテックは、規制に対応した単なるコスト削減だけではなく、将来に向けて企業の生産性、経済効率性の向上、ひいては新たな価値を創出し、経済全体の成長に大きく寄与するコンセプト」 「レグテックは、規制に対応した単なるコスト削減だけではなく、将来に向けて企業の生産性、経済効率性の向上、ひいては新たな価値を創出し、経済全体の成長に大きく寄与するコンセプト」

 レグテックは、規制に対応した単なるコスト削減だけではなく、将来に向けて企業の生産性、経済効率性の向上、ひいては新たな価値を創出し、経済全体の成長に大きく寄与するコンセプトだとみている。もともとレグテックは英国規制当局が『レギュラトリー・サンドボックス(規制の砂場)』などの枠組みを作ってテクノロジー系企業を核にビジネスの枝葉を広げていこうという枠組みの中、成長の足かせになり得る規制への対応として最新のテクノロジーがいかに貢献するかという発想から生まれている。バターンはいろいろあるが単純な規制対応や目先のコストカットだけではなく、テクノロジーが国家戦略を含めて企業・産業全体を伸ばす礎になっていく大きなテーマだという認識だ。また、各種テクノロジーを活用した監視など、当局側においても監督ツールの開発、実装化に取り組んでいる。レグテックは金融機関をはじめとする規制対応企業、規制当局、テクノロジー企業、コンサルティングファームなどそれぞれが独自の役割を担い、国民含め広く便益を享受する『エコシステム』であり、社会の規制コストを劇的に削減し、新しい価値を創造するイノベーションであると考えている。

――そもそも、日本でニーズは具体的に出ているのですか?

 レグテックに関してまずは金融機関が出発点になっていると感じている。金融機関は日本の規制ばかりではなく進出先の各国の規制にも直面している。アンチマネーロンダリングなどに関してすでに多くの事例にみられるように制裁金の規模も格段に大きい。また金融機関が対応すべき規制も多岐にわたり常に変化し、変更管理含め規制への取り組みは経営において重要課題の1つとなっている。他方、医薬品や自動車など、金融以外の業界も規制対応やコンプライアンスに関する問題に直面しており、レグテックは幅広い業界で活用されるようになるだろう。製造業での不正事件が相次いでいるが、人間だからこそ起こりうる不正や事故などを、例えばAI(人工知能)を生産ラインに設置することで防止するという取り組みも始まっており、コンプライアンス違反を回避しつつ生産性を上げるレグテックに広く期待を寄せている。

顧客ニーズに応じて個別にチームを組成

――EY Japanとして具体的にどのような体制で展開していますか?

 EY Japanは、アドバイザリー、アシュアランス(監査・保証業務)、税務およびトランザクションといった4つのサービスラインからなるが、レグテックに関する取り組みは、各分野の専門家から構成される横断的な体制で動いている。英EYは英当局から各国主要地域におけるフィンテックのエコシステムに関する調査を受託し、その調査レポート("UK FinTech: On the cutting edge")の中で英当局へのレコメンデーションの1つとしてレグテックの推進を挙げた。そのような経緯からEY全体としてグローバルに取り組みを進めており、本邦でも英EYと連携し昨年から稼動を本格化した。具体的には顧客ニーズに合わせ、内部統制、コンプライアンスリスク、不正リスク、税務など各分野の専門家と、テクノロジーに強いIT・システム系の専門家がコアメンバーとなり、さらに規模に合わせ豊富な業務経験を有するプロフェッショナルメンバーが加わりチームを形成しサービスを提供している。

――小川さんはどのような役割を務めているのですか?

 現在は主に金融機関に対するアドバイザリー業務を担当し、公認会計士としての知見をベースにグローバルな規制対応などを含めたサービスを提供している。長年取り組んできた内部統制あるいはガバナンス支援を礎に、チームリーダーとして業態を超え顧客ニーズに合致した柔軟かつ横断的なサービス提供体制の構築と、今後のレグテックの広がりに貢献するためにグローバルと連携しさらなる体制強化を推進している。

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