日本経済新聞 関連サイト

長島聡の「和ノベーションで行こう!」

記事一覧

競争はイヤ、だから真似できないモノを作る

第10回 由紀精密の大坪正人社長に聞く

ローランド・ベルガー 日本法人社長 長島 聡氏

 日本型のイノベーション=「和ノベーション」を実現していくには何が必要か。ドイツ系戦略コンサルティングファーム、ローランド・ベルガーの長島聡社長が、圧倒的な熱量を持って未来に挑む担い手たちを紹介していくシリーズ。第10回は従業員30人の小所帯ながら航空・宇宙や医療などの精密部品で圧倒的な高い評価を得る由紀精密(神奈川県茅ケ崎市)の大坪正人社長です。

「品質と信頼」強みを生かす

長島 聡氏(ながしま さとし)<br>

ローランド・ベルガー代表取締役社長、工学博士。<br>

早稲田大学理工学研究科博士課程修了後、早稲田大学理工学部助手、ローランド・ベルガーに参画。自動車、石油、化学、エネルギー、消費財などの製造業を中心として、グランドストラテジー、事業ロードマップ、チェンジマネジメント、現場のデジタル武装など数多くの プロジェクトを手がける。特に、近年はお客様起点の価値創出に注目して、日本企業の競争力・存在感を高めるための活動に従事。自動車産業、インダストリー4.0/IoTをテーマとした講演・寄稿多数。近著に「AI現場力 和ノベーションで圧倒的に強くなる」「日本型インダストリー4.0」(いずれも日本経済新聞出版社)。 長島 聡氏(ながしま さとし)
ローランド・ベルガー代表取締役社長、工学博士。
早稲田大学理工学研究科博士課程修了後、早稲田大学理工学部助手、ローランド・ベルガーに参画。自動車、石油、化学、エネルギー、消費財などの製造業を中心として、グランドストラテジー、事業ロードマップ、チェンジマネジメント、現場のデジタル武装など数多くの プロジェクトを手がける。特に、近年はお客様起点の価値創出に注目して、日本企業の競争力・存在感を高めるための活動に従事。自動車産業、インダストリー4.0/IoTをテーマとした講演・寄稿多数。近著に「AI現場力 和ノベーションで圧倒的に強くなる」「日本型インダストリー4.0」(いずれも日本経済新聞出版社)。

長島 大坪さんとは2015年のハノーバー・メッセ(世界最大規模の産業見本市)でお会いしたのが最初でしたね。「VISAI」ブランドで展開するデスクトップサイズの旋盤を見て驚きました。その後、経済産業省の素形材を中心とする「稼ぐ力研究会」でもご一緒し、その際に見せていただいた「INDUSTRIAL JP」のミュージックビデオ(町工場の機械の動きと音を編集した映像)に圧倒されました。この対談シリーズにも登場していただいた電通総研Bチームの倉成英俊氏(新しい価値観を生む「ゆるさ」と言葉の力)と企画されたんですよね。

大坪 はい。倉成とは東大工学部の機械工学科で同級生だったんです。彼は大手企業を相手にする仕事が多かったのですが、「中小企業をバズらせたいね」という話で意気投合し、あの企画につながりました。実は私もBチームのアドバイザーの1人なんですよ。

長島 へえー、知りませんでした。いつも驚かされることばかりで、この企画はすごいと思い、弊社のコンサルタントを1人お手伝いとして受け入れてもいただきました。まずは、由紀精密がどんな会社なのか、お話しいただけますか。

大坪 1950年に私の祖父が興した「ねじ屋」が始まりです。あらゆる用途のねじを作っていましたが、成長のきっかけは電子基板を機械に取り付ける四隅の小さなねじですね。さらに公衆電話向けの部品を大手企業から受注して最盛期を迎えましたが、携帯電話の普及で仕事が激減。倒産寸前まで追い込まれました。その頃、私は3Dシステム光造形・3次元CADなどを手掛け、高速金型で有名になったインクス(現SOLIZE)で働いていましたが、2006年に由紀精密に入社し、経営改革を進めてきました。

長島 由紀精密のことはいろんなメディアで紹介されていますが、この10年間で、まったく別の会社に生まれ変わったように見えますね。

大坪 お客様は95%以上変わりました。というより、主要顧客2社からの仕事が激減してしまい、その穴を埋めるよう新規に100社以上を開拓しています。入社して、まず考えたのが「当社の売りは何だろう」ということでした。そこで、お客様にアンケートしたところ、当社に発注して下さる理由は「品質」や「信頼」だったんですね。この強みを最大限に生かせる分野で勝負しようと思い、航空・宇宙と医療機器にターゲットを定めました。今では、この2本柱で売り上げの7割近くを占めています。残りは電機業界はじめ様々な業界とのお取引があります。

長島 その2分野って参入のハードルは相当高いはずなんですが、由紀精密の名前は業界内で知れ渡っていますよね。すごいことをやっている会社は多いですが、自分たちの強みが、世の中にちゃんと伝わっている会社はそんなに多くありません。どこが違うんでしょうか。

大坪 いろんな要素があると思います。まず、私は競争が嫌いで、平和主義者なんですね(笑)。だから、他社がやっていないことをやろうと考える。営業でお客様を回っていて「この値段以下なら」と言われるのですが、それを受注すると、他社の仕事を奪ってしまう。相場も下がってしまう。これはやめようと。そうではなくて、当社がやらないと、他にやる会社がないような仕事にチャレンジし、何とかしてやり遂げる。それが当社の行き方やり方だと思っています。

PICKUP[PR]