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石澤卓志の「新・都市論」

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「2022年問題」より深刻な都市のスポンジ化

みずほ証券 上級研究員 石澤 卓志氏

 生産緑地(都市部の農地)が指定後30年を経て宅地化し、地価下落などを引き起こす「2022年問題」が懸念されている。ただし、住宅用地に適した農地はあまり残っていないようだ。一方、所有者が不明で利用できない土地が増えるなど、「都市のスポンジ化」も顕在化している。前者は「住宅地等が増えすぎる」問題、後者は「住宅地等への利用ができない」問題だが、実質的にはいずれも「利用できない土地が多い」問題と言えそうだ。

農地は転用が制限される一方、税制面では優遇

都市部の農地をどう生かすか 都市部の農地をどう生かすか

 農地は食料自給率の維持などの見地から保護されており、「市街化区域」外に位置する「一般農地」と、「市街化区域」内の農地に大別できる。「市街化区域」とは、「すでに市街地を形成している区域」および「概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」と定義されている(都市計画法7条3項)。すなわち「都市部」の「宅地化すべき場所」である。

 「市街化区域」外のうち「市街化調整区域」では、原則として建物を建てることができず、開発事業には都道府県知事などの許可が必要である。ただし、農林漁業に従事する人が住む家や、これらの業務に必要な建物は許可なしに建てることができる。したがって、「一般農地」とは「農地とすべき場所」の農地と言える。

 一方、「宅地化すべき場所」にある農地は「保全する農地」(生産緑地)と、「宅地化を進める農地」(市街化区域農地)に分けられる。前者は良好な生活環境の確保などに役立つ農地等を「生産緑地地区」として都市計画に定めるもので、「都市農地」とも呼ばれる。後者は通常の「一般市街化区域農地」と、3大都市圏の「特定市」に位置する「特定市街化区域農地」に分けられる。「特定市」は、いわば「宅地化のニーズが特に強い地域」であり、2016年1月1日時点で214市が指定されている(図表1)。

図表1:農地制度の概要 注:本図は簡略化されており、全ての農地の区分を厳密に示したものではない。<br>

  図中の注記は、下記の通り。<br>

※1:「宅地並」評価=「類似宅地の評価額」-「宅地化に必要な造成費」<br>

   課税に際しては、「市街化区域農地特例率」(1/3)をかける。<br>

※2:「農地」の負担調整=「前年度の課税標準額」×負担調整率<br>

※3:「宅地類似」の負担調整=「前年度の課税標準額」+「当該年度の評価額」×1/3×5%<br>

出所:農林水産省、総務省資料 注:本図は簡略化されており、全ての農地の区分を厳密に示したものではない。
  図中の注記は、下記の通り。
※1:「宅地並」評価=「類似宅地の評価額」-「宅地化に必要な造成費」
   課税に際しては、「市街化区域農地特例率」(1/3)をかける。
※2:「農地」の負担調整=「前年度の課税標準額」×負担調整率
※3:「宅地類似」の負担調整=「前年度の課税標準額」+「当該年度の評価額」×1/3×5%
出所:農林水産省、総務省資料

 農地は転用が制限されていることや、農業の収益性が低いことなどを考慮して、一般の「宅地」に比べて固定資産税の評価額が低くなっている。また、地価の高騰などに対して、固定資産税の急増を抑えるために、独自の「負担調整」が適用されている。さらに相続税についても、納税猶予などの特例が措置されている。

 農林水産省の資料では、10a(10アール、約1反、1,000㎡)当たりの固定資産税額(全国平均)のイメージを、①一般農地は千円、②生産緑地は数千円、③一般市街化区域農地は数万円、④特定市街化区域農地を数十万円、としている。

 2014年度の課税調書によれば、全国平均の固定資産税額は、①の一般農地が949円、③の一般市街化区域農地が58,408円、④の特定市街化区域農地が186,494円だった。また、東京都平均では、①が1,035円、③が76,490円、④が377,755円だった。②の生産緑地の固定資産税は、場所によって大きく異なるが、一般の宅地に比べて「100分の1~200分の1」と言われている。

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