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古川修の次世代自動車技術展望

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最終ゴールは「交通事故ゼロ化」

芝浦工業大学 特任教授 古川 修 氏

 1年間連載したこのコラムは、今回で最終回となる。これまで、様々な次世代自動車技術についての展望を行ってきた。その過程で、メディアをにぎわす自動運転やEV化の話題は、技術的に冷静に見れば過剰な期待を持ちすぎであることなどを指摘してきた。今回は、まとめとして、未来へ向けて自動車の次世代技術の開発のゴールは、「完全自動運転」と捉えるべきではないことに言及する。そして、社会ニーズから見た新たなゴール設定とそこへ至るロードマップ作りが重要であることを、提言したい。

混乱の原因はシーズをゴールにしたこと

 国土交通省は2012年から2年間にわたり、「オートパイロットに関する検討会」を設置して、意見交換を行ってきた。産官学のメンバーで構成され、私もメンバーの1人として参加した。そのときには、ADAS(先進運転支援システム:Advanced Drive Assist System)を段階的に高度化していくことが目的であり、その結果、「完全自動運転」が実現すると、捉えていた。つまり、目的は「完全自動運転」の実用化ではなく、ADASの高度化が議論の中心だった。

 しかし、2013年に開催されたITS世界会議東京大会で、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車の3社が国会議事堂周辺の公道で自動運転の実証実験を行い、安倍晋三首相も試乗したことなどがきっかけとなり、「完全自動運転」を期待する機運が盛り上がり始めた。

 また、米国では2005年から、米国防総省・高等研究計画局(DARPA)が主催する自動運転競技会が行われ、その優勝チームの大学スタッフが米グーグルに呼ばれて、無人運転可能な自動運転技術の開発が開始した。欧州でも、ADASや自動運転の各技術に関するプロジェクトが進められ、自動車メーカー独自の開発も盛んになってきた。

 このような日米欧における自動運転の開発機運は、各自動車メーカーの経営者が技術潮流に乗り遅れたくないという競争意識をもとにどんどん盛り上がってきた。さらに、メディアが読者や視聴者に、完全自動運転車がすぐにでも実用化されると誤解させるようなニュースを流すことで、そう近くない将来に無人運転も可能となるといった風聞が信じられるようになってきている。

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