日本経済新聞 関連サイト

パクリ商標

記事一覧

腕時計「ミュラー」に勝訴した「三浦」

知財コミュニケーション研究所代表、弁理士 新井 信昭氏

 商品、サービス、コンテンツのヒットを受けて商標登録を申請したら先を越されていた......。なぜ許されるのか。 有名ブランドをパロディーにしたと思われるあの商標。「ご本家」の無効請求に対し、裁判所が示した判断は? 商標を巡る謎解き。注目の判例に迫ります。

スイス高級ブランド、「フランク三浦」を提訴

ディンクスの商標㊤(登録5517482号)とフランク・ミュラーの商標(同4978655号) ディンクスの商標㊤(登録5517482号)とフランク・ミュラーの商標(同4978655号)

 本章で取り上げるのは、『フランク ミュラー』のパロディと言われる『フランク三浦』という商標です。

 詳しくはこの後ご説明しますが、この問題は、パロディ商標の一つを「OK」と最高裁が判断したので、これと同じように横文字をもじってパロディ化した商標はすべて射程範囲に入るから心配なし、ということにはなりませんということです。

 まず、『フランク三浦』の事件では何があったのかを整理しましょう。ここで登場する会社は、大阪市で時計類を製造販売する株式会社ディンクス(以下、「ディンクス社」と言う)と、スイスの高級時計ブランドメーカーのフランク・ミュラー社(以下、
「ミュラー社」と言う)です。

 事件は、ディンクス社が、時計などについて『フランク三浦』の商標を出願し、これが登録されたことから始まります。商標『フランク三浦』は、その読み方が近いし両商標ともに時計に関係するものであることなどから、ミュラー社の商標『フランク ミュラー』のパロディ商標であるといってよいでしょう。

 ちなみに、『フランク三浦』の「浦」の右肩に「点(、)」がありません。これは間違いではありません。きっとわざとなんでしょう。ディンクス社のオフィシャル・ホームページの商標も「点なし浦」が表示されています。

 細かいところはさておき、ともかく商標『フランク三浦』が登録されました。

 そこでミュラー社は、フランク三浦の商標登録は無効にしてほしいと特許庁に求めました。第Ⅲ章でご紹介した「無効審判」です。

 どういう理由だったかは後でご説明しますが、特許庁の結論(審決)は、商標『フランク三浦」の登録は無効であるというミュラー社の言い分を認めました。

 しかし、ディンクス社は黙っていませんでした。審決に間違いがあると主張して知的財産高等裁判所(知財高裁)に出訴したら(平成27年(行ケ)10219号)、「審決は誤り」という九回裏の満塁ホームランのような劇的な大逆転判決を勝ち取りました。その後、最高裁も「誤りの判断に誤りなし」としたので、審決が誤りであることが確定しました。

PICKUP[PR]